かつての巨人「インテル」は復活できるのか?政府と競合が群がる壮大なる再建劇

こんにちは。今回取り上げるのは、かつては「「インテル、入ってる」」でおなじみ、世界を席巻した半導体の巨人、インテル(Intel)です。最近、インテルには信じられないようなニュースが続いています。米国政府をはじめ、ライバルのNVIDIA、さらにはソフトバンクグループまで、とんでもない額の資金がインテルに集まってきているのです。まさに「インテル、めちゃお金入ってる」状態といえるでしょう。

なぜ今、国策レベル、業界レベルでインテルの再生プロジェクトが進められているのか。その背景から、今後の復活の可能性、そして私たち投資家がどう見るべきかまで、じっくりと掘り下げていきたいと思います。

Part 1:そもそもなぜインテルは苦境に陥ったのか?

かつて「Intel入ってる」が合言葉だったインテルが、ここ数年で苦しい状況に立たされた最大の原因は「技術開発の遅れ」です。特に半導体の性能を左右する最先端の製造プロセス競争で、台湾のTSMCや韓国のサムスン電子といったライバルに遅れを取ってしまいました。

インテルは自社で設計から製造までを一貫して行う「垂直統合モデル」を強みとしていましたが、製造技術が高度化・複雑化するにつれて、最先端を維持するための莫大な投資と開発が追いつかなくなってしまったのです。

この技術的なつまずきは、市場でのシェア低下に直結しました。

  1. CPU市場:ライバルのAMDに猛烈に追い上げられ、シェアを大きく落としました。
  2. AIチップ市場:成長分野であるAIチップでは、NVIDIAが圧倒的な存在感を持ち、インテルの影が薄くなっています。
  3. 象徴的な別れ:2020年には長年のパートナーであったAppleがMacのチップを自社製に切り替えました。これは、インテルの技術的な優位性が過去のものになりつつあるという印象を世界中に与える出来事となりました。

こうした業績不振を受け、経営トップが交代。新しいCEOに就任したリップ・ブータン氏は、インテルの工場を外部顧客にも使ってもらう「ファウンドリー(半導体受託製造)事業」を本格的に強化するという、大胆な再建策を打ち出しました。

Part 2:国策と業界の思惑が絡む巨額支援の正体

ファウンドリー事業を成功させるには、莫大な投資と強力な後ろ盾が必要です。ここに、米国政府や競合他社が乗り出してきているわけですが、その思惑は様々です。

1. 米国政府:経済安全保障の観点

米国政府は、国内で設計から製造までを全て行える唯一の大手企業であるインテルの存続と強化が、国家の安全保障に不可欠だと判断しています。

  • 巨額な資金提供:アメリカ国内の半導体産業を支援する「チップス法」に基づき、約1.3兆円相当の補助金を株式取得に切り替え、インテルの筆頭株主となりました。
  • 台湾依存からの脱却:半導体供給をTSMCなどに頼りすぎている現状への危機感があり、国内の供給網を強化したいという強い意向があります。

2. ソフトバンクループ:AI戦略の布石

ソフトバンクグループも約3,000億円の出資を表明しています。

  • AI革命への備え:孫正義氏が掲げるAI戦略において、根幹となる高性能な半導体の製造能力へのアクセスを確保したいという狙いがあります。
  • アームとの連携:傘下のチップ設計会社アームが設計したチップを、インテルに製造委託するなどの連携も視野に入れている可能性があります。

3. NVIDIA:戦略的提携と政治的配慮

最大のライバルであるNVIDIAが約7,500億円を出資し、提携を模索していることは非常に衝撃的です。

  • 技術的な協業:データセンターや高性能PC向けに、NVIDIAが得意なGPU(画像処理半導体)とインテルが得意なCPU(中央処理装置)をより緊密に連携させる新しいハードウェアを共同開発する計画があるようです。
  • 政府との関係維持:米国政府が進めるインテル再建策に協力する姿勢を見せ、政治的な関係を良好に保ちたいという側面もあります。

4. AppleとTSMC:複雑な駆け引き

  • Apple:インテルは、ファウンドリー事業の「アンカークライアント(中心顧客)」としてAppleを獲得したいと考えています。一方、Apple側にも製造をほぼTSMC一社に頼っている「サプライチェーンのリスク分散」という動機があります。
  • TSMC:インテルは最大のライバルであるTSMCにも出資や提携を模索しています。インテルとしてはTSMCのお墨付きを得ることで自社技術の信頼性を高めたい。TSMC側には独占禁止法上の懸念を和らげる効果があるかもしれませんが、技術流出リスクを抱えており、交渉は困難を極めるでしょう。

Part 3:巨人の復活の鍵と投資家としての視点

国もライバルも巻き込んだ壮大な復活劇ですが、その道のりは険しいものです。インテルが本当に復活を遂げるための鍵となるポイントを整理します。

復活の鍵となる4つのピース

  1. 技術(最重要):現在開発中の次世代製造プロセス「18A(オングストロム)」を計画通りに立ち上げ、ライバルに対して競争力のある性能を出せるかどうかが絶対条件です。
  2. 顧客(ファウンドリー):Appleのような超大口顧客を実際に獲得し、ファウンドリー事業を軌道に乗せられるか。
  3. パートナーシップ:NVIDIAなどとの戦略的な提携が、単なる資金提供に終わらず、具体的な成果に結びつくか。
  4. 政府支援:経済安全保障上の重要性から、米国政府の継続的な支援は欠かせません。

投資家としての判断

インテル株は、まさに「ハイリスク・ハイリターン」の銘柄と位置づけられます。

【投資魅力的な点】

  • ハイリターンへの期待:もし18Aプロセスが成功し、ファウンドリー事業が軌道に乗れば、株価は大きく上昇する可能性があり、「ターンアラウンド(業績回復)銘柄」として大きなリターンが期待できます。
  • 戦略的な重要性:国家レベルの支援や業界の巨人たちとの連携は、インテルの持つ戦略的な重要性の高さを物語っています。

【無視できないリスク】

  • 実行リスク:いくら壮大な計画があっても、18Aプロセスの立ち上げの遅れや、ファウンドリー事業でのTSMCやサムスンとの競争に敗れる可能性は常にあります。
  • 強力なライバル:AMDやNVIDIA、TSMCといった強力すぎるライバルとの競争環境は、今後ますます厳しくなるでしょう。
  • 政府介入リスク:筆頭株主が政府になったことで、経営の自由度が損なわれたり、アメリカ政府からの補助金が海外事業に悪影響を及ぼしたりする可能性もゼロではありません。

インテルの挑戦は、単なる一企業の再建ではなく、今後の半導体業界の勢力図や、国家戦略のあり方を占う上で非常に重要なケーススタディとなるでしょう。この壮大な物語の結末を、ご自身の投資戦略とリスク許容度と照らし合わせながら、ぜひ一緒に見届けていきましょう。


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