【オクロ vs ニュースケールパワー】AIブームの巨大な電力需要で注目の「SMR(小型モジュール炉)」銘柄を徹底比較!

AIブームの到来とともに、世界の株式市場で今、静かに、しかしとてつもない熱狂を生んでいるテーマがあります。それは、次世代エネルギーとして期待される「SMR(小型モジュール炉)」です。

今回は、このSMR分野で注目を集める2つの企業、「オクロ(Oklo)」と「ニュースケールパワー(NuScale Power)」について徹底解説します。AI時代の電力需要を支えるのは、堅実なエリートか、それとも夢を追う革命児か。投資家必見の「ウサギと亀」のような競争の全貌をまとめました。


AI時代の電力不足を救う?注目のSMR銘柄「オクロ vs ニュースケール」を徹底比較

最近、生成AIの進化が止まりませんが、その裏側で深刻な問題が浮上していることをご存知でしょうか。それは「電力不足」です。AIを動かすデータセンターは、私たちが想像する以上に電気を大量に消費します。そんな中、クリーンで安定した電力供給源として白羽の矢が立ったのが、原子力発電の新しい形である「SMR(小型モジュール炉)」です。

本日は、このSMR業界で覇権を争う注目の2銘柄、ニュースケールパワーとオクロを取り上げます。

一方は、米国政府から唯一設計のお墨付きを得ているものの、コスト高でプロジェクトが頓挫した過去を持つ「原子力界のエリート」、ニュースケールパワー。

もう一方は、あのOpenAIのサム・アルトマン氏がバックにつき、「AI時代は俺たちが支える」と意気込むものの、まだ政府の認可すら突破できていない「革命児」、オクロ。

まるで性格の異なるこの2社を比較することで、未来のエネルギー覇権争いの行方が見えてきます。

そもそもSMRとは何か?従来の原発との決定的違い

まず基本として、SMR(Small Modular Reactor)が従来の原子力発電所とどう違うのか、その革新性について整理しておきましょう。

1. サイズと作り方の革命

SMRの最大の特徴は、その名の通り「小ささ」にあります。従来の原発が100万キロワット級の巨大施設であるのに対し、SMRは30万キロワット以下と非常にコンパクトです。しかし、単に小さくしただけではありません。

作り方が根本的に異なります。従来は現場で10年近くかけて巨大なドームを建設していましたが、SMRは主要部品を管理された工場で「モジュール」として量産します。それを現場に運んでプラモデルのように組み立てるのです。これにより、品質の安定、工期の短縮、そしてコストダウンが期待されています。

2. 安全性の革命「受動的安全」

小ささは安全性にも革命をもたらしました。それが「受動的安全」という考え方です。

万が一、全ての電源が失われるような大事故が起きても、人間の操作や外部動力に一切頼らず、物理法則だけで原子炉を安全に停止・冷却できる設計になっています。炉が熱くなれば水が自然に対流して熱を逃がし、重力で制御棒が落ちて核反応を止める。つまり、物理法則そのものが究極の安全装置になるわけです。

3. 設置場所の革命

安全性が格段に高まったことで、これまで原発建設など考えられなかった場所にも設置できる可能性が生まれました。離島や山間部はもちろん、電気を大量に消費するデータセンターの真横に置くことも夢ではありません。まさにエネルギーの「地産地消」が可能になるのです。

なぜ今、SMRに注目が集まるのか?

SMR自体は以前からある概念ですが、なぜ今これほどまでに投資家の注目を集めているのでしょうか。そこには3つの巨大な追い風が吹いています。

一つ目は、世界的な脱炭素の流れです。SMRはCO2を出しません。太陽光や風力もクリーンですが、天候に左右される弱点があります。その点、SMRは24時間365日安定して発電できるため、再生可能エネルギーの弱点を補う完璧なピースとして期待されています。

二つ目は、AIによる爆発的な電力需要です。これが今一番の起爆剤と言えるでしょう。国際エネルギー機関(IEA)の試算によれば、2030年までにAIデータセンターが消費する電力は、日本全体の年間総電力消費量に匹敵する規模になる可能性があるといいます。日本という国一つ分の電力をAIだけで食い尽くす、想像を絶する世界が迫っています。

三つ目は、政府の強力な後押しです。特に米国政府は本気です。トランプ政権時代から、審査期間を劇的に短縮する大統領令が出されたり、国防総省が軍事基地の電源として導入を進めたりと、国策として推進しています。

脱炭素、AI、そして政府。この3つのトレンドが交差する点に、SMRブームがあるのです。

堅実なエリート:ニュースケールパワー(NuScale Power)

では、ここからは具体的な銘柄の比較に入りましょう。まずは「亀」タイプとも言える、堅実派のニュースケールパワーです。

技術とビジネスモデル

ニュースケールが採用しているのは「軽水炉」です。これは現在世界中の大型原発で使われている、最も実績のある技術です。その信頼性の高い技術をそのまま小型化したのが彼らの製品「ボイジャー」です。

ビジネスモデルは「製品を売る」スタイルです。AppleがiPhoneを売るように、原子炉モジュールというハードウェアを電力会社などに販売したり、技術をライセンス供与したりします。メーカーとしてのビジネスと言えます。

最大の強み:世界唯一の「お墨付き」

ニュースケールの圧倒的な強みは、米国の原子力規制委員会(NRC)から設計認証を取得している世界で唯一のSMR企業であるという点です。これは、原子炉の基本設計が安全基準をクリアしているという国のお墨付きであり、いわば「大学の入学許可」のようなものです。SMR事業化における最大のハードルを既に一つ越えていることは、絶大なアドバンテージです。

アキレス腱:コストの壁

一方で弱点もあります。それは「経済性」です。実は、記念すべき初号機となるはずだったアイダホ州のプロジェクトが、建設費用の高騰で中止に追い込まれた過去があります。見積もりが当初の3倍近くまで膨れ上がり、「技術は認められても値段が高すぎて誰も買えない」という懸念を市場に抱かせました。現在は戦略を修正し、国内よりもルーマニアやポーランドといった海外案件に注力し、より現実的な路線へ舵を切っています。

夢を追う革命児:オクロ(Oklo)

対する「ウサギ」タイプ、挑戦者のオクロを見てみましょう。

技術とビジネスモデル

オクロが挑むのは「高速炉」という全く異なる次元の技術です。冷却材に水ではなく液体金属ナトリウムを使い、超小型のマイクロリアクターを開発しています。さらに驚くべきは、使用済み核燃料(核のゴミ)をリサイクルして再び燃料として燃やすことを目指している点です。もし実現すれば、放射性廃棄物問題を解決するゲームチェンジャーになり得ます。

ビジネスモデルも対照的です。オクロは「電気を売る」モデル、つまりサービスプロバイダーです。自社で発電所を建設・運営し、作った電力をデータセンターなどの顧客に長期契約で販売します。これは電力会社に近いビジネスであり、運営リスクを全て自社で抱えるハイリスク・ハイリターンなモデルです。

最大の強み:カリスマとストーリー

オクロの最大の魅力は、そのストーリー性にあります。OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が会長を務めていたという事実が、「AIの未来にはオクロの電力が必要不可欠だ」という強力な物語を生み出しています。ターゲット顧客もAIデータセンターにほぼ特化しており、市場の期待を集めやすい構造になっています。

アキレス腱:規制の壁

しかし、オクロには大きな壁が立ちはだかっています。それは「まだNRCの認可が下りていない」ことです。過去に一度、申請書類の不備で却下された経緯があり、現在は再挑戦の真っ最中です。認可が下りるまでは売上はゼロ。それまでの開発資金(キャッシュバーン)に耐えられるかという財務的リスクが常に付きまといます。

投資家視点:どちらに賭けるべきか?

では、投資家としてどちらを選ぶべきでしょうか。これはリスク許容度によって答えが変わります。

ニュースケールパワーは、現実主義の堅実派向けです。NRC承認済みという事実は、投資における大きな安心材料です。コスト問題という課題はありますが、技術そのものの信頼性は高く、手堅くヒットを狙っていく銘柄と言えます。

オクロは、夢を追うハイリスク・ハイリターン派向けです。もしNRCの承認という最後のピースがハマれば、現在の期待値を一気に超えて株価が青天井になる可能性を秘めています。まさに場外ホームラン狙いです。しかし、承認が取れなければ価値が大きく毀損する、バイオベンチャーの創薬承認待ちに近い「オール・オア・ナッシング」な要素があります。

ただし、最近オクロには追い風も吹いています。米国エネルギー省が推進する先進的原子炉の実証プログラムに、オクロのプロジェクトが3件も採択されたのです。政府の支援で開発が加速し、規制当局との対話も円滑になる可能性があります。

おわりに:エネルギー革命の未来

SMR市場全体で見れば、2032年頃にかけて大きく成長すると予測されており、一過性のブームではないでしょう。しかし、冷静に見るべきは、商業運転が始まるのはまだ数年先だという事実です。現在は「期待」という燃料で株価が動いている段階であり、ボラティリティ(価格変動)が非常に高いことは覚悟する必要があります。

もしSMRが本当に普及すれば、私たちのエネルギーインフラは根本から変わります。巨大発電所から一方的に送電される中央集権型から、各地域やデータセンターが自前の電源を持つ「分散型エネルギー社会」へ。これは単なるエネルギー革命ではなく、社会構造そのものを変える話です。

この壮大なる物語の序章に、投資家としてどう関わるか。堅実な亀の歩みを見守るのか、ウサギの跳躍に賭けるのか。それを考えるだけでも、非常にワクワクするテーマではないでしょうか。

エネルギーの新時代の幕開けを、ぜひ皆さんも注目してみてください。


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