こんにちは。最近の市場は変動が激しく、少し落ち着かない状況が続いていますが、そんな中で、未来の技術に関する非常に注目すべきニュースが飛び込んできました。次世代技術のまさに中心である「量子コンピューター」を巡り、アメリカ政府が本格的に動き出したというのです。なんと、政府が直接、関連企業の株を保有するかもしれないという具体的な話まで出てきています。
ウォールストリート・ジャーナルの報道によると、米政権は、複数の量子コンピューター開発企業と「資本参加」、つまり、政府が資金を提供する代わりにその企業の株式を取得するという形の支援について協議を進めているとのことです。具体的に名前が挙がっているのは、IonQ、Rigetti Computing、D-Wave Quantumといった企業群で、その他にも同様の枠組みでの支援が検討されている模様です。
インテルに続く「国策」の波
政府が特定の企業の株を直接取得するというこの動きは、以前にも見られました。記憶に新しいのは、半導体大手のインテルへの支援です。この際も、国内の半導体生産を支援する「CHIPS法」に基づき、政府が約89億ドルもの巨額を投じて株式の約10%を取得し、筆頭株主になるという異例の対応を取りました。
今回の量子コンピューター企業への関与も、この流れの延長線上にあると見て良いでしょう。政府は、半導体だけでなく、レアアースを扱うMPマテリアルズや、EVバッテリーの鍵となるリチウム開発のリチウム・アメリカズに対しても、国防総省や政府融資を通じて株式取得を含む大規模な支援を決定しています。
反導体、レアアース、リチウム、そして今回の量子コンピューター。これらに共通するのは、どれも国の経済や安全保障の根幹に関わる、極めて戦略的な分野だということです。これまで「自由競争」や「市場原理」を重んじてきたアメリカが、国の将来にとって不可欠な分野では、もはや市場に任せるだけでなく、政府が直接リスクを取って産業を育成・保護するという、産業政策の大きな方向転換を示唆していると言えます。
なぜ量子コンピューターが最重要課題なのか
では、政府がそこまでして量子コンピューターに介入しようとする理由はどこにあるのでしょうか。
第一に、その途方もない可能性です。量子コンピューターは、現在のスーパーコンピューターが何百年もかかるような超複雑な計算を、驚異的なスピードで解き明かす力を持つとされています。これが実用化されれば、新薬の開発スピードが飛躍的に向上したり、全く新しい素材が生み出されたり、人工知能(AI)の能力が格段に高まったりと、あらゆる産業に革命をもたらすことが期待されています。
そして第二に、国家安全保障という極めて重要な側面があります。将来的に実用的な量子コンピューターが登場すると、現在世界中で使われている銀行システムや国家機密を守るための暗号が、いとも簡単に解読されてしまう可能性があります。これは、国の安全保障や経済システムそのものの根幹を揺るがしかねない大問題です。他国に先駆けてこの技術を確立し、制御下に置くことは、軍事的・経済的な観点から国家にとって最重要課題の一つとなっているのです。
投資家として見るべき「光」と「影」
このニュースは、量子コンピューター関連企業への投資を考える投資家にとって、大きなチャンスに見えるかもしれません。「国策に売りなし」という格言もあります。
【光(ポジティブな側面)】
- 長期的な成長ポテンシャル:もし量子コンピューターが社会を変える基盤技術になれば、インターネットや半導体産業勃興期のような桁違いの成長が期待できます。
- 政府の強力なバックアップ:多額の研究開発費が先行する企業にとって、政府からの資金援助や資本参加は資金繰りの不安を和らげ、技術開発を加速させる大きな追い風となります。
- 継続的な支援策:国の最重要課題と位置づけられることで、今後も税制優遇などの継続的な支援策が期待できるという安心感があります。
【影(注意すべきリスク)】
- 技術の不確実性:量子コンピューターはまだ初期段階であり、実用化までの道のりや、最終的にどの技術方式がスタンダードになるかは全く分かりません。多くの企業が開発競争の途中で脱落する可能性を秘めた、ハイリスクな分野です。
- 収益性の問題:現在、ほとんどの関連企業は商業的な売上が少なく、研究開発費が先行する赤字経営の状態にあります。株価が期待だけで支えられている可能性もあります。
- 株式の希薄化リスク:政府からの出資条件によっては、政府が株式を取得する際に新株予約権(ワラント)が大量に発行され、市場に出回る株式数が増えることで、既存株主の一株あたりの価値が薄まる(希薄化)リスクがあります。
- 政府介入による影響:政府が主要株主となることで、純粋な企業利益の最大化よりも、国家安全保障上の要請が優先されるといった、企業経営への影響も考慮する必要があります。
- 株価の加熱感:すでにこの報道を受けて株価が急騰している場合、将来への期待が過剰に織り込まれ、高値掴みになるリスクにも十分注意が必要です。
まとめ
米国政府による量子コンピューター企業への資本参加の動きは、単なる資金援助の話ではなく、世界の経済構造と資本主義のあり方自体が変化しようとしている大きな潮流を示しています。
量子コンピューター分野への投資は、非常に高いリターンが期待できる一方で、技術的な不確実性や収益化までの難しさなど、極めてリスクの高い投資対象であることは間違いありません。この分野に投資をする際は、ポートフォリオの一部で余裕資金を使い、「未来への壮大な夢」にかけるというような、超長期的な視点と十分な覚悟を持って臨むことが適切であると言えるでしょう。
