【決算速報:テスラ(TESLA)】 過去最高売上も時間外で株価下落…不安を拭えない複数の懸念といくつかの期待

みなさんこんんちは。先日発表された「テスラ(TSLA)」の第3四半期決算は、「過去最高売上」という力強い数字を叩き出したものの、利益面では市場の予想を下回る「増収減益」という複雑な結果となりました。この結果を受けて、株価は時間外取引で一時2~4%ほど下落しています。

一言で言えば、短期的な利益を犠牲にしてでも、販売台数の拡大と未来への巨額な投資を優先するという、テスラの「長期成長戦略」が色濃く出た決算だったと言えるでしょう。

決算前に相次いだネガティブな話題

本題の決算内容に入る前に、今回の発表を前にテスラを取り巻いていたいくつかのネガティブなニュースにも触れておきたいと思います。

まず、イーロン・マスクCEOの巨額報酬です。最大で約150兆円規模にもなるこの報酬パッケージに対し、大手議決権助言会社のISSとグラスルイスが相次いで「反対すべき」との推奨を出しました。主な理由は、既存株主の価値が薄まる可能性(株主価値の希薄化リスク)と、業績に見合わない異常な報酬水準ではないかというガバナンス上の問題です。

また、安全性に関わるニュースも立て続けに報じられました。

  • リコール:アメリカ国内でバッテリー接続不良が原因となり、走行中に駆動力を失う可能性があるとして、約1万3,000台のリコールが発表されました。走行中のパワー喪失は重大事故に直結しかねない深刻な問題です。
  • サイバートラック訴訟:昨年発生した火災事故で学生3人が亡くなった痛ましい事故について、ご遺族がテスラを提訴したというニュースもありました。訴状では、サイバートラック特有の電動ドアが衝突後に開かず、車内から脱出できなかった点が焦点となっており、「死の罠」だとまで指摘されています。デザインの優先が安全性に影響を与えているのではないか、という懸念は今後も大きな課題となりそうです。

過去最高を更新した「売上」の光

まずポジティブな面から見ていきましょう。

売上高は、前年同期比11.6%増の280億ドル(約4.3兆円)と過去最高を更新し、市場予想を上回る非常に好調な結果となりました。

この増収の主な要因は、アメリカでのEV購入税(1台あたり7,500ドルの補助金)が9月末で終了するのを見越した、いわゆる**「駆け込み需要」**です。これによって販売台数、つまり納車台数も過去最高の49万799台を記録しました。増収は3四半期ぶりの達成となります。

市場予想を下回った「利益」の影

一方で、利益面は厳しい結果となりました。

  • **調整後1株当たり利益(EPS)**は0.50ドルとなり、市場予想(約0.54ドル)を下回りました。
  • 本業の儲けを示す営業利益は前年同期比で4割も減少し、これで4四半期連続の減益となりました。
  • さらに、利益率の低下が鮮明になりました。売上から原価を引いた粗利益率は18%でしたが、より重要な営業利益率は前年同期の10.8%から5.8%へとほぼ半減しています。

売上を伸ばすために価格を下げざるを得なかった状況や、未来への積極的な投資が、足元の利益率を大きく圧迫した形です。

利益を圧迫した複数の要因

テスラが大幅な減益となった背景には、複数の要因が絡み合っています。

  1. 値下げとコスト増:競争激化の中で販売台数を維持・拡大するための値下げ圧力、そしてより価格を抑えた新型の廉価モデル(スタンダードレンジ版)の投入に伴う立ち上げコストの増加がありました。
  2. 未来への巨額投資:将来の成長ドライバーと位置づけられるAI関連の研究開発費が莫大に増えています。自動運転技術のFSDや人型ロボットのオプティマスなどの開発に費用を投じた結果、営業費用全体が前年同期比でなんと50%増に膨らみました。
  3. 関税の影響:トランプ政権時代に導入された中国製品などに対する関税による輸入コストの増加も、第3四半期だけで4億ドル以上の負担増となり、利益を圧迫しました。

そして、売上を押し上げたアメリカの補助金が9月末で終了したため、10月以降の販売が反動で大きく落ち込むのではないかという、需要の持続性に関する大きな懸念が残されています。

EV以外の成長ドライバー「エネルギー事業」の急伸

EV事業が苦戦気味である一方、テスラのもう一つの重要な柱であるエネルギー関連事業は非常に好調です。

家庭用や企業向けの大型蓄電システムである**「メガパック」などが好調に推移し、エネルギー貯蔵設備の導入量は前年同期比でなんと81%も増加**しました。

これはテスラが単なる自動車メーカーではなく、大手バッテリー・エネルギーソリューション企業としての側面を強めていることを示しており、EVに次ぐ重要な成長エンジンとして着実に存在感を増していると言えるでしょう。

テスラが目指す「AI・ロボット企業」への変貌

今回の決算を通じて、テスラが短期的な利益よりも、より長期的な成長に賭ける戦略を鮮明にしたことが見えてきました。その将来の成長ドライバーこそが、EVの枠を超えたAIとロボット工学です。

決算会見では、自動運転技術やその先の「ロボタクシー」構想、人型ロボット「オプティマス」への積極的な投資が強くアピールされました。テスラは、2026年には自立走行するロボタクシー専用車両「サイバーキャブ」、大型電動トラック「セミ」、そして新型バッテリー「メガパック3」の量産を開始する計画を改めて示しています。

特に、マスクCEOは年内にも、テキサス州オースティンをはじめとするアメリカの主要都市圏で、セーフティドライバーなしの完全自動運転ロボタクシーを運行できる見通しだという、非常に野心的な目標を掲げています。

テスラは今、自動車産業という枠組みを超え、AIやロボット工学といった広範なテクノロジー分野で主導権を握ろうとする、大きな転換点にいると言えるでしょう。

投資家が注視すべき6つのリスク

壮大なビジョンを持つテスラですが、投資を考える上で注意すべきリスク要因も少なくありません。

  1. 利益率の課題:巨額な研究開発投資を続ける中で、今後も持続的に利益率を改善できるのかという「成長と利益のバランス」の問題が最大の注目点です。
  2. 計画実行リスク:ロボタクシーやオプティマスなど、野心的な計画を予定通り、かつ収益を上げられる形で実現できるのかという、過去にも見られた計画の遅延リスクです。
  3. 競争激化のリスク:中国ではBYDをはじめとする現地EVメーカーが猛烈な勢いで成長し、欧州でも既存の大手自動車メーカーがEVシフトを加速させています。テスラ車の古さを指摘する声も出始め、競争環境は厳しさを増しています。
  4. 需要の持続性:アメリカでの補助金終了、そして世界的な高金利が続く中で、EVへの需要を維持・拡大できるのかは大きな不透明要因です。
  5. イーロン・マスク氏関連のリスク:彼の予測不可能な言動や、X社(旧Twitter)など複数企業の経営によるテスラへの集中度合い、そして巨額報酬の行方が市場の信頼感に影響を与える可能性があります。
  6. 安全性・規制のリスク:自動運転技術に対する規制当局の調査、訴訟の動き、そしてリコールなどが、今後の経営や評判にどう影響するか常に注視が必要です。

今回の決算は、テスラがEVメーカーからAI・ロボット工学を核とする巨大テック企業へと変貌を遂げようとする、重要な移行期にあることを示しています。短期的な逆風と長期的な可能性、その両方をしっかりと見極めることが、今後テスラに投資する上で不可欠になりそうです。


「米国株投資の耳よりな話」をお好きなプラットフォームで