決算絶好調の「Oracle」の「CDS」が急騰…市場は「倒産リスク」を警戒中

みなさんこんにちは。最近の「Oracle(オラクル)社」といえば、AIブームの勝ち組として市場を大いに賑わせました。特に、最新の決算発表では、将来の売上を示す指標である「残存履行義務(RPO)」が、なんと138億ドルから455億ドルへと3倍以上に急増するという驚異的な数字を叩き出し、一時は株価が43パーセントも急騰する場面も見られました。

このニュースだけを聞けば、オラクルはAI需要の波に乗り、何の心配もないピカピカの優良企業に思えます。しかし、ここからが今日の本題です。水面下で、市場は別の不穏なシグナルを発しています。

株価の熱狂とは裏腹 CDS市場が鳴らす警鐘

株式市場がAIブームに湧く一方で、より冷静な債券市場では、オラクルに対する懸念の声が強まっています。その具体的な指標が「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」のスプレッドです。

オラクルのCDSスプレッドは、直近で約3年ぶりの高水準に達していることが判明しました。このCDSというのは、簡単に言えば「企業の倒産に備えるための保険」のようなものです。企業が発行した社債を持つ投資家が、万が一の倒産に備えて保険料(プレミアム)を支払い、実際に倒産(デフォルト)した場合に損失を埋め合わせてもらう仕組みです。

その保険料が高騰しているということは、債券市場、つまりプロの投資家たちが「最近のオラクルは、もしかしたら少し危ないかもしれないぞ」と見ており、高い保険料を払ってでもリスクに備えておきたいと考え始めていることの現れなのです。株式市場の楽観的な見方とは一線を画した、市場の裏側の「本音」が透けて見えます。

過去の事例を振り返ると、2008年のリーマンショックの際も、CDSの動きが金融システム全体を揺るがす事態に発展しました。そのため、今回のオラクルのCDS高騰は、単なる一企業の財務問題として片付けられない、深刻なシグナルとして捉えられているのです。

リスクの根源は「巨額すぎるAI投資」

では、なぜ絶好調に見えるオラクルが、破綻リスクを心配される事態になっているのでしょうか。原因は皮肉なことに、同社がAI事業にかける「投資の規模」があまりにも巨大すぎる点にあります。

現在、オラクルはオープンAIやソフトバンクグループといったパートナーと組み、「スターゲート計画」という壮大なインフラ構築プロジェクトを推進しています。その総額はなんと5000億ドル、日本円にして約77兆円という、一企業のプロジェクトとしては天文学的な数字です。

当然、この巨額な資金は全てを自己資金で賄えるわけではなく、大規模な社債発行、つまり「借金」によって調達されています。モルガン・スタンレーのレポートによると、このままプロジェクトが進むと、オラクルの純債務残高(借金の額)は、現在の約1000億ドルから2028年度には約2900億ドル(約45兆円)にまで膨らむ可能性があると試算されています。

CDS市場は、この45兆円もの借金を、AIプロジェクトで本当に返済できるのか、という巨大な疑念を抱いているのです。未来へのものすごい期待と、足元の巨大な財務リスク。この二つが綱引きしているのが今のオラクルを取り巻く状況です。壮大な夢を追いかけるためのコストが、企業の体力を超えてしまうのではないかという懸念が、保険料の高騰という形で現れています。

パートナーの動きも不穏 ソフトバンク株売却の衝撃

市場の不安をさらに増幅させているのが、主要パートナーの動きです。スターゲート計画の重要なパートナーであるはずのソフトバンクグループが、今年の7月から9月の間に、保有していたオラクル株を「全て」売却していたことが明らかになりました。

77兆円の巨大プロジェクトをこれから共に進めていこうというパートナーが、なぜこのタイミングで全ての株式を手放したのか。市場では、「ソフトバンク側は、我々が知らないプロジェクトの先行きやオラクルの財務について、何かネガティブな情報を掴んでいるのではないか」という憶測が飛び交い、オラクルへの疑いの目をさらに強めています。

最悪のシナリオは「AIバブル崩壊」の引き金か?

最悪のシナリオとして専門家が最も心配しているのは、オラクルのデフォルトが「AIバブル崩壊」の引き金になる可能性です。

オラクルは、金融セクターを除けば世界でも最大級の社債発行体であり、世界中の投資家から巨額の資金を集めています。そのため、単なる一企業の倒産では済まされません。

今のAI業界は、NVIDIAがAIスタートアップに投資し、そのスタートアップがオラクルのクラウドを使う、オラクルがインフラのためにNVIDIAのGPUを買う、といった複雑な資金と技術の循環(エコシステム)で成り立っています。この輪の中に無数の関連企業がぶら下がっていますから、オラクルという巨大な歯車が一つ狂えば、資金繰りが困難になる企業が続出し、ドミノ倒しのように連鎖的に影響が広がる恐れがあるのです。これは、2000年のドットコムバブル崩壊を思い起こさせる構図であると指摘されています。

個人投資家が学ぶべき4つの教訓

華やかなニュースの裏に、これほどのリスクが隠れていたという今回の事例は、私たち個人投資家にとって、非常に大きな学びとなります。

  1. ニュースの裏側を見る(光と影の両方を見る)株価の急騰や受注の好調といった表面的なニュースだけでなく、その裏で企業の負債やレバレッジがどれくらい膨らんでいるのか、その財務の健全性にも必ず目を向けましょう。企業の「光」だけでなく「影」の部分も冷静に見極める姿勢が重要です。
  2. クレジット市場のシグナルに注目する多くの投資家は株価ばかり見てしまいがちですが、今回のCDSスプレッドのように、債券市場は株式市場より早く、危険を察知して警告を送ってくれることが多々あります。表の顔だけでなく、裏の声にも耳を傾けることで、リスク管理の精度は格段に上がります。
  3. 熱狂を警戒するAIのように「誰もがすごい」と信じている大きなトレンドに市場全体が熱狂している時こそ、一歩引いて冷静になる必要があります。「みんなが絶対儲かる」と思っている時こそ、最もリスクが潜んでいるかもしれない、という警戒心を持つことが肝要です。
  4. 分散投資を徹底する今回のオラクル社のように、昨日までのヒーローが明日には巨大なリスクになるのが投資の世界の常です。AIが有望だからといって、そこに資産を集中させると、今回のような不穏なニュースが出た時に冷静な判断ができなくなります。改めて自分のポートフォリオが特定の分野に偏っていないかを確認し、分散投資を徹底することが何よりも大事な基本戦略となります。

壮大なビジョンには、常にそれと同じくらい大きなリスクが伴うものです。投資家として、その「期待」と「リスク」の両方の目を冷静に見極める目を持つことの大切さを、今回のオラクルの事例は改めて教えてくれています。光が強ければ、影もまた濃くなる。そして、その光と影のどちらにかけるか、それが投資なのだといえるでしょう。


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