こんにちは。いよいよ明日早朝、世界の投資家が固唾を飲んで見守るビッグイベントが目前に迫ってきました。それは、今の株式市場における「ラスボス」とも言える存在、「NVIDIA」の決算発表です。AIブームの真っただ中にいる主役中の主役である「NVIDIA」には、市場の期待が最高潮に高まっています。しかし、その決算発表の直前になって、なんとも不穏な動きが次々と表面化していることをご存じでしょうか。
今回は、業界の「大物」投資家たちがまるで申し合わせたかのようにNVIDIA株を売り抜けているという謎めいた現象の深層に迫り、このAIブームの未来について深く考察してみたいと思います。
1. 動き出した「百戦錬磨」の業界の大物たち
まず、市場に大きな衝撃を与えたのが、映画『マネー・ショート』で一躍有名になったマイケル・バーリ氏の動きです。百戦錬磨の彼が、今をときめくNVIDIAに対して巨額の空売りを仕掛けていることが判明しました。
空売りとは、株価が下がることに賭ける投資手法です。つまり、バーリ氏はNVIDIAの株価がこれから下がると本気で予測しているわけです。しかも、彼の指摘は単に株価が「割高だ」という単純な話では終わりません。
彼は、AIブームを牽引するハイパースケーラーたちが原価の調整を巧みに利用し、利益を人為的に良く見せている可能性がある、という非常に踏み込んだコメントを出しています。具体的にどういうことかと言いますと、AI関連の機材は進化が非常に速いため、実際には数年で時代遅れになってしまう可能性があります。それにもかかわらず、会計上では5年や7年といった長い寿命があるものとして費用を計上すると、目先の利益は良く見えてしまうのです。しかし、将来的にその帳簿上の価値と現実の価値のズレが、一気に巨額の損失として表面化するリスクを抱えているわけです。バーリ氏は、このブームの足元にある構造的な脆さをピンポイントで突いていると言えるでしょう。
2. 相次ぐ「全株売却」のニュース
バーリ氏の動きだけでも驚きですが、さらに続けて大物たちの売却ニュースが飛び込んできました。
まず、日本でもおなじみの孫正義氏率いるソフトバンクグループです。なんと、保有していたNVIDIA株をすべて売却したというのです。その額は日本円にして想像もつかないような巨額です。
公式な説明では、OpenAIへの投資資金に充てるため、とされています。しかし、ソフトバンクは過去にもAIブームが本格化する直前にNVIDIA株を売却し、その後の巨大な成長機会を逃したという苦い経験があります。その経験があるからこそ、今回は慎重になるはずなのに、なぜこのタイミングで全株を売却したのか。本当にOpenAIへの投資だけが理由なのか、それとも他に何らかの資金繰りの事情があるのか、さまざまな憶測を呼んでいます。
そして、次に明らかになったのが、「PayPalマフィアのドン」とも呼ばれるシリコンバレーの伝説的な投資家、ピーター・ティール氏の動きです。彼のヘッジファンドも、保有していたNVIDIA株を全株売却していたことが判明しました。
ティール氏は同時にテスラ株のポジションも減らしているという情報もあります。このことから、この一連の動きはNVIDIA単体の話ではなく、AIやEVといった、これまで市場を引っ張ってきたハイテク株全体への見方が、大物投資家の間で少し慎重な方向へと変わってきた可能性を示唆していると言えるでしょう。
3. 強気派と弱気派の「ガチンコ対決」
これだけ次々と大物が株を売っていると聞くと、「AIブームはこれで終わりなのか」と不安になってしまうかもしれません。しかし、話はそう単純ではないところが、今の市場の複雑さを物語っています。
ご紹介したような非常に弱気な動きがある一方で、ウォール街の大手金融機関の多くは、全く逆の信じられないほど強気な見方を維持しているのです。
例えば、バンク・オブ・アメリカはNVIDIAの投資判断を「買い」で継続し、それどころか2026年、2027年といったかなり長期的な売上と利益の予測をさらに引き上げています。「AIバブルへの懸念は短期的なものに過ぎない」とまで断言し、NVIDIAが持つ技術的な優位性、そしてAIを動かすシステム全体を作り上げる実行能力は他者には到底真似できないと高く評価しているのです。ウェルズ・ファーゴなども同様に非常に楽観的な見方を示しています。
まさに、強気派と弱気派の意見が真正面からぶつかり合っている状況です。
ある調査データによると、直近の3ヶ月間でNVIDIA株のポジションを増やしたヘッジファンドが161社。一方で減らしたファンドが160社と、ほぼ真っ二つに分かれていることが示されています。これほどまでにプロの意見が拮抗している状況は極めて珍しく、市場がいかにNVIDIAの将来について迷い、激しく議論しているかという現実を表しています。
4. この動きが示唆する「AI投資の第1章の終わり」
では、この矛盾した状況を私たちはどう考えれば良いのでしょうか。大物たちが売るという事実が示唆する可能性を、三つのシナリオで整理してみましょう。
シナリオ1:AIバブルのピークアウト説
最もシンプルな見方です。NVIDIAの株価はこの1年で凄まじい上昇を見せました。純粋に過熱感を警戒し、懸命な投資家たちが利益確定に動いているという可能性です。
シナリオ2:個別事情説
彼らが必ずしもNVIDIAの未来が暗いと考えているわけではない、という見方です。例えばソフトバンクのように、特定の目的(OpenAIへの投資など)のために資金を捻出する必要があった、あるいはポートフォリオのリバランス(特定の株の割合が増えすぎたための調整)であった可能性です。
シナリオ3:物色のローテーション説
投資家の資金が、あるセクターから別のセクターへ移動している流れの一環だという見方です。AIや半導体のようにすでに大きく上昇してしまった銘柄から資金を引き揚げ、銀行株や建設株など、まだ割安で出遅れているセクターへ資金を移し、次の上昇の芽を探しているという考え方です。
そして、最も重要な洞察は、これら三つのシナリオが同時に起きていること自体かもしれません。
これは、すなわち**「AI投資の第1章が終わったサインかもしれない」**ということです。
これまでは、「AI関連なら何でも買い」という極端に単純な潮流でした。しかし、今、空売りの専門家、潮流を読む投資家、そして事業家が、それぞれ全く別の理由で利益確定に動いたということは、市場が次のフェーズに入ったことを強く示唆しています。次のフェーズとは、**「AIの本当の勝ち組は誰か」「AIが次にどの産業を変革するのか」**という、より複雑で、銘柄の選別が必要な段階です。私たちは今、巨大な物語の転換点に立っているのかもしれません。
5. 個人投資家が持つべき3つの心構え
では、個人投資家である私たちは、明日の決算発表を前にどう心構えをしておけば良いでしょうか。重要なポイントを三つご紹介します。
ポイント1:ボラティリティ(価格の大きな変動)を覚悟する
今のNVIDIAには、市場の期待が異常なほど高まっています。そのため、たとえ歴史的に素晴らしい決算が出たとしても、市場の期待ほどではなかったという理由だけで売られる可能性が十分にあります。逆に予想を大きく上回れば、再び急騰するでしょう。どちらに転んでも株価は大きく動くことを覚悟しておくべきです。
ポイント2:ヘッドラインだけでなくガイダンスに注目する
決算の数字そのものも大事ですが、それ以上に重要なのが「ガイダンス」、つまり今後の見通しです。特にCEOのジェンスン・フアン氏の言葉のトーンに注目すべきです。今後のAIチップの需要について、彼が自信に満ち溢れているのか、それとも少し慎重な言い回しを使っているのか。また、懸念されている中国への輸出規制の影響について、どれだけ具体的に、正直に語るか。その言葉の端々に、未来の株価のヒントが隠されているでしょう。数字の裏にある経営者の本音を探る視点が大切です。
ポイント3:自分自身の投資シナリオを再確認すること
大物たちが売ったというニュースは、もちろん重要な参考情報です。しかし、それに振り回されて、自分の投資判断を見失ってはいけません。あなたは短期的なキャピタルゲインを狙っているのか、それともAIが作る10年後、20年後の長期的な未来にかけているのか。この大きなイベントを前に、一度立ち止まって自分自身の投資の軸を再確認することが何よりも大切です。
強気と弱気がこれほど激しくぶつかり合う中でのNVIDIAの決算発表は、まさに正念場です。この決算が、今後のAIラリーが続いていくのかどうかの大きな分水嶺になるかもしれませんね。
