【Oklo|オクロ決算】将来性に期待も赤字拡大と売上ゼロ継続に市場からは不安感も…?

次世代原子力エネルギー企業として、今まさに米国市場の熱い視線を集めている「Oklo(オクロ)」。AI時代の膨大な電力需要を支える救世主となるのか、それとも期待先行のバブルに過ぎないのか。

先日発表された第3四半期決算の内容や、同社のビジネスモデル、技術的な特徴、そして投資家が知っておくべきリスクについて、詳しく解説していきます。

そもそも「Oklo(オクロ)」とはどんな企業なのか

Okloは、カリフォルニア州サンタクララに本社を置く、先進的な原子力技術開発企業です。

特に「小型高速炉」と呼ばれるタイプの原子力開発に特化しています。

創業は2013年。マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業したジェイコブ・デウィット氏とキャロライン・デウィット氏のご夫妻によって設立されました。

社名の「Oklo」には壮大な由来があります。

これは、約17億年前に自然界で核分裂連鎖反応が起きたとされる、アフリカ・ガボン共和国の「オクロ」という地名から名付けられています。

自然が作り出した奇跡の原子炉のように、持続可能でクリーンなエネルギーを目指すという意志が込められているのでしょう。

また、同社を語る上で外せないのが、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏の存在です。

彼は初期からOkloを支援しており、会長を務めていた時期もありました。

AI界の巨人がバックアップしているという点も、市場からの注目を集める大きな要因となっています。

ビジネスモデルのユニークさ:発電所ではなく「電気」を売る

Okloの主力製品は「オーロラ(Aurora)」と名付けられた小型の原子力発電所(パワーハウス)です。

心臓部にはコンパクトな高速中性子炉が使われており、出力は当初15MWから50MW程度とされていましたが、最近では顧客の需要に応える形で最大75MWまで性能を高めると発表しています。

75MWというと、おおよそデータセンター1つ分を賄える規模感です。

従来の巨大な原発とは異なり、工場で部品を製造し、必要な場所に運んで設置するというコンセプトを持っています。

そして何より特徴的なのが、そのビジネスモデルです。

Okloは「建設・所有・運営(Build-Own-Operate)」モデルを採用しています。

つまり、発電所を建設して顧客に売り渡すのではなく、Oklo自身が発電所を所有・運営し、顧客とは長期の電力購入契約(PPA)を結んで「電気そのもの」を販売するのです。

ターゲットとなる顧客は、データセンターやAI関連施設、送電網が未整備な遠隔地のコミュニティ、工場、さらには軍事基地などです。

実際、アラスカ州のアイルソン空軍基地にマイクロ原子炉を設置するプロジェクトのベンダーにも選ばれており、24時間365日止まることが許されない重要施設への電力供給を担おうとしています。

安全性と技術:ゴミを燃料に変える「高速炉」

「高速炉」と聞くと安全性を懸念する声もあるかもしれませんが、Okloの技術は過去の実績に基づいています。

オーロラは冷却材に水ではなく液体金属のナトリウムを使用する高速炉ですが、この技術のベースとなっているのは、アイダホ国立研究所(INL)で30年間にわたり安全に運転された実績を持つ実証炉「EBR-II」です。

30年の運用実績がある技術を現代風に改良している点は、一定の安心材料と言えるでしょう。

安全性については「受動的安全設計」という考え方が採用されています。

これは、万が一異常が発生しても、人間による操作や外部電源を必要とせず、物理法則に従って自然に原子炉が停止し、冷却されるという仕組みです。

実証炉の試験では、冷却材の流れが止まっても炉心溶融(メルトダウン)には至らないことが確認されています。

さらに画期的なのが燃料戦略です。

Okloは新しい核燃料だけでなく、既存の原発から出る「使用済み核燃料」をリサイクルして再利用する技術開発を進めています。

これが実現すれば、放射性廃棄物の問題を軽減しつつ、資源を有効活用できるため、まさにゲームチェンジャーとなり得る技術です。

テネシー州には最大16億8000万ドルを投じて先進燃料センターを設立する計画もあり、自前で燃料供給網を確立しようという強い意志が見て取れます。

最新決算の内容:赤字拡大も、将来への布石は着々

さて、市場が注目した第3四半期決算の内容ですが、結論から言うと数字面では厳しい結果となりました。

1株あたりの純損失は0.20ドルとなり、アナリスト予想の0.13ドルよりも赤字幅が拡大しました。

研究開発費も予想を上回る1490万ドルを計上しており、開発が活発である反面、コスト増につながっています。

売上高はもちろんまだゼロです。

しかし、財務状況自体は悲観するものではありません。

手元の現金および現金同等物は約4億1000万ドルあり、市場性のある有価証券と合わせると約12億ドル(約1800億円規模)の資金を保有しています。

当面の開発資金は潤沢と言えるでしょう。

加えて、将来的な資金需要に備え、最大35億ドル規模の証券発行を可能にするための登録申請も行っており、資金調達の選択肢を広げています。

事業進捗におけるポジティブなニュース

数字以外の面では、非常に重要な進展がありました。

特に大きいのが、米国エネルギー省(DOE)との連携強化です。

Okloと提携先が進める3つのプロジェクトが、DOEの「原子炉パイロットプログラム(RPP)」に選定されました。

これは先進的な原子炉の建設を加速させるための政府主導プログラムで、これに選ばれると、通常の許認可プロセスよりも迅速な手続きを活用できる可能性があります。

プロジェクトの中核となるアイダホ国立研究所(INL)でのオーロラ建設については、9月に起工式を終え、10月末からは土木工事も始まっています。

主要機器の調達も開始されており、計画は着実に建設フェーズへと移行しています。

また、テネシー州での燃料リサイクル施設計画も、2030年代初頭の生産開始を目指して動き出しており、雇用創出や地域経済への貢献も期待されています。

なぜ今、SMR(小型モジュール炉)が熱いのか

OkloのようなSMR開発企業がこれほど注目される背景には、AIブームによる電力需要の爆発的な増加があります。

AIの学習や運用には膨大な電力が必要であり、しかも安定供給が不可欠です。

太陽光や風力といった再生可能エネルギーは天候に左右されるため、ベースロード電源としては不安定さが残ります。

そこで、CO2を出さず、狭い土地にも設置でき、安定して発電できるSMRが「クリーンなベースロード電源」として脚光を浴びているのです。

政府の後押しも強力です。

トランプ前政権時代から原子力産業強化の動きは加速しており、2050年までに国内の原子力発電容量を現在の約4倍にするという野心的な目標も掲げられています。

エネルギー安全保障の観点からも、国策として推進されている分野なのです。

しかし、有望な市場だけにライバルも強力です。

ビル・ゲイツ氏が設立した「テラパワー」や、Googleと提携した「カイロス・パワー」、Amazonが出資する「X-energy」、さらにはニュースケール・パワーや既存の大手メーカーなどがひしめく激戦区となっています。

投資家が留意すべきリスク

夢のある技術と市場環境ですが、投資対象として見た場合、Okloには高いリスクも伴います。

最大の懸念点は、やはり「まだ売上がない」という点です。

現状は開発段階であり、実際に顧客から収益を得られるようになるまでには数年を要します。

決算でも示された通り赤字は続いており、今後も巨額の開発資金が必要です。

また、法的拘束力のある電力購入契約(PPA)が現時点では締結されていない点も注意が必要です。

意向表明などはあるものの、正式な契約に至るまでにはまだハードルがあります。

さらに、原子力の宿命とも言える「規制リスク」も無視できません。

過去に許認可申請が却下された経緯もあり、今後の審査プロセスがスムーズに進むか、予定通りの時期に稼働できるかは不透明です。

DOEの支援があるとはいえ、原子力規制委員会(NRC)の審査は厳格で時間がかかることで知られています。

株価のボラティリティ(変動率)の高さも特徴です。

期待感だけで株価が乱高下しやすく、短期間で数倍になることもあれば、急落する局面もあります。

また、現在の時価総額が将来の収益性を織り込みすぎている、いわゆるバブル状態ではないかという指摘もあります。

まとめ:期待と現実を冷静に見極める

Okloは、AI時代のエネルギー問題を解決し得る革新的な技術とビジネスモデルを持った企業です。

使用済み核燃料のリサイクルや、政府との強力なパートナーシップなど、他社にはない強みも持っています。

しかし、その道のりは決して平坦ではありません。

技術的な課題、許認可の壁、資金調達、そして強力なライバルたちとの競争。

これらを乗り越え、計画通りに発電所を稼働させることができるかが勝負の分かれ目となります。

投資を検討する際は、輝かしい未来へのビジョンだけでなく、足元の赤字や規制リスクといった現実的な側面も冷静に見極める必要があるでしょう。

次世代エネルギーの旗手として、Okloが今後どのような成長曲線を描くのか、引き続き注視していく価値は大いにありそうです。


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