米国株投資の世界で、今まさに「地殻変動」とも呼べる大きな動きが起きようとしているのをご存じでしょうか。クリスマスを目前に控えた12月23日、ある業界にとって運命の分岐点となるかもしれない日付が迫っています。
今回のテーマは「ドローン」です。これまで市場の7割以上を支配してきた絶対王者、中国の「DJI」が、米国市場から完全に排除される可能性が高まっています。もし王者が不在となれば、そこに生まれるのは巨大な空白と、それを埋める米国企業への千載一遇の投資チャンスです。今回は、この劇的な市場環境の変化と、そこで躍進が期待される注目の米国ドローン銘柄3社について詳しく解説していきます。
12月23日の衝撃:DJI排除の法的根拠
事の発端は「2025年度国防権限法(NDAA)」です。この法律に基づき、米国の国防総省などの安全保障担当機関が「この製品は安全である」というお墨付きを与えない限り、DJI製品は連邦通信委員会(FCC)の規制対象リストに入ることになります。
このリスト入りの意味するところは極めて重大です。まず、新製品の認証が受けられなくなるため、米国での販売ができなくなります。しかし、今回の規制が恐ろしいのはそれだけではありません。FCCは新たに「過去に認証した製品であっても、安全保障上の懸念があれば認証を取り消せる」という権限を手にしました。つまり、これから発売される新製品だけでなく、すでに出回っている製品や在庫までもが販売・使用禁止になる可能性があるのです。いわゆる「過去への遡及適用」という強力な措置です。
DJI側は「監査を受けて立つ」という姿勢を見せていますが、米国側は一向に監査を始める気配がありません。法律上で監査の責任所在が曖昧になっていることも一因ですが、あえて時間切れを狙っているような動きにも見えます。背景にあるのは明確な「米中技術覇権争い」です。DJI製品によるデータ収集(映像や位置情報など)が中国政府へ渡るリスクを懸念し、証拠の有無に関わらず「中国の軍事関連企業」とみなして排除にかかる。これは単なる一企業の排除ではなく、米国による自国産業保護のための国策と言えるでしょう。
市場から消える「9割」のドローン
この規制がどれほどのインパクトを持つのか、数字で見るとその凄まじさが分かります。DJIのシェアは、趣味などの消費者向け市場で77%以上。そして何より深刻なのが、農業、警察、消防といった公共安全・産業分野でのシェアです。ここではなんと約90%がDJI製品に依存していると言われています。
公園で飛ばすホビー用ならまだしも、社会インフラを支える現場の機材がごっそりなくなるわけです。すでに現場では在庫不足や中古価格の高騰が始まっており、影響は現実のものとなっています。しかし投資家の視点で見れば、これほど巨大な市場の空白が生まれる瞬間は滅多にありません。特に、データの機密性が求められる政府や警察などの分野では、DJIの代替となる「米国製」への需要が爆発的に高まります。
そこで重要になるキーワードが「ブルーUAS」です。これは米国防総省が「安全である」と認定したドローンのリストであり、今後政府の仕事を受注するための事実上のパスポートとなります。このリストに入っているかどうかが、勝敗を分ける決定的な要因となるのです。
【本命】エアロ・バイロメント(AV)
まず名前が挙がるのが、国防・軍事用ドローンの王者「エアロ・バイロメント(ティッカー:AV)」です。
この企業は、米国の「脱DJI」の流れから最も直接的かつ巨大な恩恵を受けると考えられています。長年にわたり米国政府や軍と取引をしてきた実績があり、信頼性は盤石です。ウクライナの戦場でその名を知らしめた攻撃型自爆ドローン「スイッチブレード」も同社の製品です。
DJIが強みとしていた安価な商業用ドローンとは異なり、エアロ・バイロメントは高度なセキュリティと信頼性が求められる軍事・防衛領域で圧倒的な地位を築いています。国境警備や重要インフラの監視など、DJI排除後の高付加価値な市場を確実に掴んでいくでしょう。まさに「米軍御用達」の揺るぎない本命銘柄です。
【対抗】アクソン・エンタープライズ(AXON)
次に注目したいのが、警察市場の覇者「アクソン・エンタープライズ(ティッカー:AXON)」です。
非常に面白いことに、この会社自体はドローンを製造していません。しかし、警察や消防の市場でDJIが失うシェアをごっそり奪う可能性があります。その秘密は、同社が作り上げた「エコシステム」にあります。
アクソンは、警察官が使用するテーザー銃やボディカメラで圧倒的なシェアを持ち、それらの映像証拠を管理するクラウドプラットフォームも提供しています。現場の警察官からすれば、ドローンの映像も普段使っているアクソンのシステムで一元管理したいと考えるのが自然です。
そこでアクソンは、米国製の有力な未公開ドローン企業「スカイディオ(Skydio)」と独占契約を結びました。自社で作るのではなく、すでに技術力のあるメーカーと組み、自社の巨大な顧客基盤(警察組織)に流し込む戦略です。投資家としては、本来まだ投資できない有料企業スカイディオの成長に、アクソンを通じて間接的に乗ることができる点も魅力です。ドローン単体ではなく、警察インフラ全体を握るプラットフォーマーとしての強みが光ります。
【大穴】レッド・キャット・ホールディングス(RCAT)
最後に紹介するのは、小型株ながら爆発力を秘めた「レッド・キャット・ホールディングス(ティッカー:RCAT)」です。
時価総額も小さく知名度は低いですが、DJIが得意としてきた「小型・高性能」の分野で米軍に食い込もうとしている新興企業です。傘下のティール・ドローンズ社が製造する機体はもちろんブルーUAS認証済み。特に赤外線カメラなどを駆使した「夜間飛行・偵察能力」に定評があります。
そして最近、この企業に強烈な追い風が吹きました。米軍の次期短距離偵察ドローンの最終契約を、なんとあの有力候補スカイディオを破って獲得したのです。これは会社の規模やステージを根本から変えてしまうほどの大きなニュースでした。小型株ゆえに株価変動リスクは高いですが、上昇率という夢においては一番のポテンシャルを秘めた「夜間作戦のスペシャリスト」です。
株式未公開の巨人「スカイディオ」と市場の未来
上場企業ではありませんが、たびたび名前が登場した「スカイディオ」の存在も無視できません。自律飛行技術では世界トップクラスであり、日本ではNTTドコモとも提携しています。一般消費者向けから早々に撤退し、産業・公共分野に特化した戦略も見事です。
今回のドローン規制を投資の視点で総括すると、企業の業績や新製品といった内部要因だけでなく、地政学リスクや政府規制といった「外部要因」がいかに強烈な追い風になり得るかということを示しています。
米中対立という大きな歴史の流れの中で、米国政府は意図的に「米国産メーカーが勝てる市場」を作ろうとしています。自由競争の原理を曲げてでも安全保障を優先する、この構造変化を読み解くことができれば、大きな投資機会が見えてくるはずです。
もちろん、DJI側もマレーシアでの生産や別ブランド名の使用などで規制逃れを画策する動きがあり、イタチごっこは続くかもしれません。しかし、「空の産業革命」における主役が交代しようとしている流れは変わりません。12月23日を境に動き出す新たなドローン市場の覇権争い、その行方を投資家としてしっかりと注視していく必要があるでしょう。
