【ワーナー争奪戦第2ラウンド】トランプ大統領も参戦。Netflix vs パラマウントの裏にある「政治とカネ」のリアルドラマ

皆さん、こんにちは。今回は、今まさにエンタメ業界を大きく揺るがしている「ワーナー・ブラザース」の買収劇について、その裏側をじっくりと深掘りしていきたいと思います。

少し前まで、「ワーナーの買収先はNetflixで決まりだろう」という空気が流れていました。しかし、ここに来て事態は急変。まるで映画のような大逆転劇、いえ、それ以上の壮大なドラマが繰り広げられているのです。単なる企業の買収話にとどまらず、あのアメリカ大統領経験者や世界的な大富豪までが絡んでくる、まさに「事実は小説よりも奇なり」を地で行く展開となっています。

今回は、このハリウッドを舞台にした複雑怪奇なバトルロイヤルを、皆さんと一緒に紐解いていきましょう。

Netflixによる買収合意、その時世界は

まずは、事の発端から整理しておきましょう。

動画配信サービスの王者であるNetflixが、ワーナー・ブラザースの映画およびテレビ部門を約720億ドル、日本円にして約11兆円という巨額で買収することで合意したというニュースが世界を駆け巡りました。

ワーナーといえば、皆さんもご存知の通り、「ハリー・ポッター」シリーズや「バットマン」をはじめとするDCコミックス作品、古くは「風と共に去りぬ」に至るまで、数々の名作を世に送り出してきた名門中の名門スタジオです。もしこれがNetflixの手に渡れば、そのコンテンツライブラリーは盤石のものとなり、ストリーミング業界での地位は不動のものになるだろうと誰もが思いました。

Netflix側の提示額は1株あたり約28ドル。ここで重要なポイントとなるのが、彼らが買収対象とした範囲です。Netflixが欲しがったのは、あくまで「テレビ・映画スタジオ」と「ストリーミング部門」でした。つまり、ワーナーという巨大コングロマリットの中から、美味しいところ、自分たちのビジネスに直結する部分だけを切り取って手に入れようとしたのです。

このニュースが流れた時、多くの投資家や映画ファンは「これで決まりか」と思ったことでしょう。しかし、ビジネスの世界はそう単純ではありませんでした。ここに「待った」をかける強力なライバルが出現したのです。

パラマウントの逆襲。桁違いの提案と真の狙い

Netflixの独走を許じと名乗りを上げたのが、もう一つのメディア大手、「パラマウント(スカイダンス)」です。「ミッション:インポッシブル」シリーズなどで知られる、こちらも歴史あるスタジオですね。

パラマウントが提示してきた内容は、Netflixのそれを遥かに凌駕する衝撃的なものでした。なんと提示額は約1084億ドル。Netflixの720億ドルを大きく上回る金額をぶつけてきたのです。これは単なる金額の吊り上げ競争ではありません。パラマウントの提案には、Netflixとは決定的に異なる、ある重要な条件が含まれていました。

それは、「ワーナーという会社を丸ごと買収する」という点です。

先ほどお話しした通り、Netflixは必要な部門だけを選んで買収しようとしました。しかしパラマウントは違います。Netflixが「いらない」と判断して切り捨てようとした部門も含め、会社全体を引き取ると申し出たのです。そして、この「Netflixがいらないと言った部門」こそが、今回の騒動の核心であり、政治的な火種となる部分でした。

その部門とは、ニュース専門チャンネルの「CNN」です。

このCNNの存在が、単なるエンタメ企業のM&Aを、政治的な思惑が渦巻く権力闘争へと変貌させていくことになります。

トランプ大統領の介入。なぜエンタメ企業の買収に?

ここで登場するのが、ドナルド・トランプ大統領です。一国の大統領が、特定の民間企業の買収案件に口を出すというのは極めて異例のことですが、彼はNetflixの買収案に対して明確に懸念を表明しました。

表向きの理由は「独占禁止法」への抵触です。「Netflixとワーナーが合併すれば市場シェアがあまりにも大きくなりすぎる」「競争が阻害される」といった、もっともらしい理由を挙げています。しかし、多くの専門家や関係者は、彼の本当の狙いは別のところにあると見ています。

そう、先ほど触れた「CNN」です。

トランプ氏とCNNの因縁は深く、2016年の大統領選挙の頃から激しい対立関係にありました。彼はCNNを「フェイクニュース」と呼び、目の敵にしてきました。CNN側もロシア疑惑や女性問題などでトランプ氏を厳しく追及し、時にはホワイトハウスからCNNの記者が締め出されるという事態にまで発展したこともあります。

トランプ氏にとって、CNNは憎き天敵とも言える存在です。

Netflixの買収案では、CNNは買収対象から外されます。そうなると、CNNは独立したまま残るか、あるいは別のどこかへ売却されることになり、その行方は不透明になります。

一方で、パラマウントの提案は「会社丸ごと買収」です。つまり、CNNもパラマウントの傘下に入ることになります。もし、パラマウントがトランプ氏にとって都合の良い相手であれば、CNNをコントロール下に置くことができるかもしれない。

トランプ氏は「いかなる取引であれ、CNNが確実に含まれるか、あるいは別途売却されることが保証されるべきだ」とまで発言しています。さらには「CNNの経営陣は腐敗しているか無能だ」と罵り、経営から手を引かせるべきだと主張しています。

つまり、彼は自分の意に沿わない報道機関を解体、あるいは作り変えるチャンスをこの買収劇に見出している可能性があるのです。

Oracle創業者の大富豪ラリー・エリソンの暗躍

では、なぜトランプ氏はパラマウント(スカイダンス)の案を推すのでしょうか。そこには、もう一人の超大物の影が見え隠れします。

パラマウント・スカイダンスを率いるCEO、デビッド・エリソン氏。彼の父親をご存知でしょうか。IT業界の巨人、オラクルの創業者であり、世界トップクラスの大富豪として知られるラリー・エリソン氏です。

このラリー・エリソン氏は、実はトランプ大統領の熱烈な支持者であり、多額の献金を行っていることでも知られています。ビジネスと政治の世界をつなぐ強力なパイプが、ここにあるのです。

報道によると、Netflixの買収計画が発表された直後、ラリー・エリソン氏はトランプ大統領に直接電話をかけたと言われています。大統領に直接電話ができるというだけで、その関係の深さが窺えますが、彼はそこで「Netflixによる買収は市場の競争を阻害する」と進言したそうです。

構図が見えてきましたね。

息子の会社であるパラマウントがワーナーを買収できるように、父親であるラリー・エリソン氏が裏から大統領に働きかけ、大統領はその意向を汲んで(そして自らのCNNへの恨みを晴らすために)Netflix案に難癖をつける。

まるでドラマのような、あるいはそれ以上に生々しい「政治とカネ」の癒着が、この巨大買収劇の裏側で進行しているのです。

予想される3つの結末と私たちへの影響

さて、役者は揃いました。この混沌とした状況は、今後どのような結末を迎えるのでしょうか。考えられるシナリオは大きく分けて3つあります。

シナリオ1:Netflixの勝利

当初の予定通りNetflixが買収に成功するパターンです。この場合、Netflixは圧倒的なコンテンツを手に入れ、私たちのエンタメ生活はより充実したものになるでしょう。しかし、トランプ大統領や規制当局による厳しい審査が待ち受けています。また、切り離されたCNNがどうなるのかという問題は残されたままです。

シナリオ2:パラマウントの大逆転勝利

トランプ氏やエリソン氏の思惑通り、パラマウントが勝利するパターンです。この場合、Netflixやディズニーに対抗する新たな巨大メディア企業が誕生します。

最大の焦点はやはりCNNです。パラマウント側は「CNNを抜本的に改革する」と宣言しています。「抜本的な改革」という言葉の響きは魅力的でもあり、恐ろしくもあります。もしこれが、CNNをトランプ氏に好意的な報道機関へと作り変えることを意味するなら、アメリカのジャーナリズムのあり方そのものが大きく変わってしまうかもしれません。

シナリオ3:買収自体の破談

規制当局の承認が得られなかったり、条件が折り合わなかったりして、誰もワーナーを買収できないという最悪のパターンです。

この場合、ワーナーは巨額の負債を抱えたまま、業界再編の波に取り残されることになります。名門スタジオが迷走し、素晴らしい作品が世に出なくなることだけは避けてほしいものです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

単なる企業のM&Aニュースかと思いきや、その実態はホワイトハウスまで巻き込んだ壮大な権力闘争でした。

どのシナリオになったとしても、エンターテインメント業界、そしてメディア業界に地殻変動が起きることは間違いありません。

私たち投資家、そしてコンテンツを楽しむ視聴者としても、この行方は決して他人事ではありません。株価の動きはもちろんのこと、私たちが日々目にするニュースや映画が、どのような意図で作られ、届けられるようになるのか。その背景にある力学を知っておくことは、これからの時代を生き抜く上で非常に重要になってくるでしょう。

このドラマの結末がどうなるのか、引き続き注視していきたいと思います。皆さんは、この買収劇、どちらが勝つと思いますか。あるいは、CNNはどうなるべきだと思いますか。


「米国株投資の耳よりな話」をお好きなプラットフォームで