来年の投資のヒントがここに?【アンドリーセン・ホロウィッツ2026年トレンド予想を解説】

こんにちは。今日は、米国株投資家の皆さんにとって、まさに「未来の地図」となるような非常に興味深い動画の内容をご紹介します。

シリコンバレーで最強とも称されるベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツ(通称a16z)。彼らはFacebookやTwitter、Airbnbといった、今や私たちの生活に欠かせない巨大企業を初期段階で見出し、投資してきたことで知られています。そんな「未来の設計者」とも言える彼らが発表した2026年のトレンド予測レポート「Big Ideas」。この動画では、膨大なレポートの中から個人投資家が押さえておくべきポイントを厳選して解説してくれています。

単なる予測ではなく、彼らが実際に資金を投じようとしている「投資のロードマップ」でもあるこの内容。これからの米国株市場で何が起きるのか、どの分野にチャンスがあるのかを知る上で、これほど有益な情報はありません。動画の内容をテキストでじっくりと振り返り、皆さんの投資戦略のアップデートにお役立てください。

2026年を貫く最大のテーマ:AIは「ツール」から「エージェント」へ

まず、5つの具体的なトレンドに入る前に、動画ではすべての根底にある最も重要な変化について触れています。それは、AIの役割が根本的に変わるということです。

これまでのAI、つまり2025年までのAIは、私たちが質問を投げかけると答えてくれる「賢いチャットボット」でした。人間が使いこなすための便利な「ツール」だったのです。しかし、a16zは2026年以降、AIは「エージェント」へと進化すると予測しています。

「エージェント」とはどういうことでしょうか。それは、人間が一つひとつ指示を出さなくても、AIが自律的に状況を判断し、目的を達成するために必要な業務を次々とこなしていく存在になるということです。「これをやっておいて」と一言伝えるだけで、AIが「そのためにはAとBとCの作業が必要ですね。やっておきます」と自分で考えて動いてくれる。そんなイメージです。

この「AIエージェント化」という変化は、単に便利な機能が増えるというレベルの話ではありません。社会のインフラから私たちの働き方まで、あらゆるものがこの変化を前提に作り変えられていくことになります。この大前提を頭の片隅に置いた上で、具体的な5つのトレンドを見ていきましょう。

トレンド1:インフラソフトウェアの劇的な変化

最初のテーマは「インフラソフトウェア」です。AIが自律的に動くエージェントになると、それを支える裏側のシステム、つまりインフラも全く新しいものが必要になります。a16zはこれを「エージェントネイティブなインフラ」と呼んでいます。

これまでのシステムは、人間がキーボードを叩くスピードを前提に設計されていました。しかし、AIエージェントは人間の何千倍ものスピードでシステムにアクセスし、24時間休みなく働き続けます。これまでのシステムでは、こうしたAIからの超高速かつ大量のアクセスを「サイバー攻撃だ」と誤認して遮断してしまう可能性すらあるのです。つまり、AIという新しい住人がやってくるために、道路や水道といった街のインフラをすべて作り直すような大規模な変革が求められています。

ここで重要になるのが「データの扱い方」の変化です。特に注目されているのが、PDFや動画、音声、日々のメールといった「非構造化データ」の活用です。これまで整理しにくく、企業のサーバーに眠っていただけのデータが、AIによって分析可能な「宝の山」へと変わります。Snowflake(スノーフレーク)やMongoDB(モンゴDB)といった企業は、こうした雑多なデータを整理し、AIが読み込める形にするための巨大な図書館を提供する役割として、大きな追い風を受けることになるでしょう。

また、複雑化するシステム全体を監視するDatadog(データドッグ)のような企業の重要性も増していきます。さらに、サイバーセキュリティの分野では「AI対AI」の戦いになります。人間が監視していては到底追いつかない攻撃を防ぐため、Palo Alto Networks(パロアルトネットワークス)やCrowdStrike(クラウドストライク)のようなAIを活用したセキュリティ企業のチャンスも拡大します。

ただし、投資家として注意すべき点もあります。それはSaaS企業のビジネスモデルです。これまでの「1ユーザーあたり月額いくら」という料金体系は、AIエージェントが1人で100人分の仕事をこなすようになれば通用しなくなります。今後は、AIがどれだけの仕事量をこなしたかという「成果報酬型」への移行が求められ、これに対応できない企業は淘汰されるリスクがあるとのことです。

トレンド2:アメリカンダイナミズム(製造業のルネサンス)

2つ目のテーマは「アメリカンダイナミズム」。これは製造業やエネルギーといった、いわゆるオールドエコノミーな実業の世界を指します。ハイテクとは対極にあるように思えますが、ここにAIとソフトウェアが導入されることで「米国工場のルネサンス」が起きると予測されています。

ここで面白いのが「工場そのものがプロダクトになる」という考え方です。単にロボットを導入するという話ではありません。市場の需要やサプライチェーンの情報をAIがリアルタイムで分析し、製造ラインを自動で組み替える。午前中は製品Aを作っていたラインが、午後には全く別の製品Bを作るために自動的に切り替わる。そんな柔軟なシステムそのものが、企業の競争力、つまり「製品」になるのです。

こうなると、Caterpillar(キャタピラー)のような建設機械メーカーを見る目も変わります。単に機械を売るだけでなく、現場のデータを吸い上げ、より効率的な建設現場というシステム全体を作り出す企業として評価されるようになります。Deere(ディア)のような農業機械や、GE Vernova(GEベルノバ)のようなエネルギー企業も、AIを導入してどうビジネスを変革しているかが注目のポイントになります。

また、この流れは国防分野にも及びます。ドローンやセンサーで物理世界をデータ化し、ソフトウェアで解析するPalantir(パランティア)のような企業も、このトレンドのど真ん中にいると言えるでしょう。

トレンド3:バイオ・ヘルスケア(治療から予防へ)

3つ目のテーマは「バイオ・ヘルスケア」です。AIが物理世界と関わるトレンドが、最も個人的で親密な形で現れるのがこの分野です。

ヘルスケアにおける最大の変化は、ターゲットが「病気の人」から「健康な人」へとシフトすることです。「健康なMAU(月間アクティブユーザー)」が巨大な市場になると予測されています。

Apple Watchなどのウェアラブルデバイスを想像してみてください。これらは単なるガジェットではなく、24時間体制で私たちの健康状態を監視し、アドバイスをくれる「健康管理エージェント」です。人々は病気になってから治療費を払うのではなく、健康を維持し予防するために、これらエージェントに対価を払うのが当たり前になる。Hims & Hers(ヒムズ・アンド・ハーズ)のような遠隔医療プラットフォームも、この流れの一端を担っています。

さらに、創薬の現場では「自律型ラボ」が登場します。AIが仮説を立て、実験を行い、結果を分析するまでを全自動で行う研究室です。これにより新薬開発のスピードは劇的に向上します。Eli Lilly(イーライリリー)やNovo Nordisk(ノボノルディスク)といった大手製薬会社が、AI創薬のスタートアップと積極的に提携しているのもこのためです。

もちろん、個人の健康データという究極のプライバシー情報を扱うため、データを守る技術も極めて重要になります。そこで次のテーマがつながってきます。

トレンド4:クリプト・フィンテック(金融のインフラ化)

4つ目のテーマは「クリプト・フィンテック」です。暗号資産というと投機的なイメージが強いかもしれませんが、今後はより実用的な「金融インフラ」としての役割が強まると見られています。

その中心にあるのが、ドルなどの法定通貨と価値が連動するステーブルコインです。AIエージェント同士が1秒間に何千回もの取引を行う未来では、従来の銀行システムでは処理速度もコストも見合いません。そこで、高速かつ安価な決済手段としてステーブルコインが標準になると予測されています。

Visa、PayPal、Block(ブロック)といった既存の金融大手も、すでにステーブルコインの活用を真剣に検討し、実証実験を進めています。彼らはこれが未来の決済システムの重要な一部になることを理解しているのです。取引の透明性と安全性を確保するブロックチェーン技術は、AIエージェント経済圏において必須のインフラとなるでしょう。

トレンド5:コンシューマーメディア(動画の中に入る体験)

最後のテーマは「コンシューマーメディア」です。ここでのキーワードは「動画の中に入る」です。

生成AIの進化により、私たちは動画を画面の外から眺めるだけの存在ではなくなります。生成された動画の世界にユーザーが入り込み、物を操作したり、ストーリーを変えたりできるインタラクティブな世界が生まれます。映画を見ている途中で主人公の服を購入したり、主人公に話しかけてストーリーを変えさせたりすることが可能になるのです。

これは、ゲーム、SNS、Eコマースといった境界線が消滅し、すべてが融合した巨大な体験になることを意味します。Roblox(ロブロックス)やUnity(ユニティ)、そしてメタバースに投資してきたMeta(メタ)といった企業にとって、生成AIは欠けていた最後のピースでした。これまでのメタバースは静的で空っぽな世界でしたが、生成AIがあれば、常に新しく変化し続ける世界を作り出すことができます。これにより、一度は下火になったメタバースが実用的なレベルで復活し、新たな成長産業となる可能性があります。

投資家が今とるべきアクション

ここまで見てきた5つのトレンド。インフラ、製造業、ヘルスケア、金融、メディアと、一見バラバラに見えますが、すべて「AIがエージェント化し、現実世界を動かしていく」という一つの大きな潮流でつながっています。

では、私たち投資家はどう動くべきでしょうか。動画では、これまでのように「とりあえず半導体などの分かりやすいAI関連株を買っておけばいい」というフェーズは終わりつつあると指摘しています。ゲームは次のステージに進みました。

これからは、その企業がAIエージェントを自社のビジネスにどう組み込み、具体的な変革を起こして利益を生み出そうとしているか。その解像度の高い視点が求められます。製造業であれ医療であれ、それぞれの業界でAIを「実利」に変えている企業はどこなのか。

ぜひ今回の話を参考に、ご自身のポートフォリオを「2026年仕様」に見直してみてはいかがでしょうか。未来は私たちが思うよりも早く、そして劇的に変化しようとしています。


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