「ラリー・エリソン」の破天荒人生と知られざるエピソード- オラクルの復活劇、6回の結婚、ジョブズやイーロンとの友情、日本への愛…

今回は人気シリーズ「伝説の起業家列伝」の第9回。「オラクル」の創業者で現会長兼CTOの「ラリー・エリソン(Lawrence Joseph Ellison)」氏を徹底的に深掘りしていきます。まるで生きる伝説のようなエリソン氏が、80歳を超えてなおAIブームの最前線で再び世界を驚かせているのはご存知でしょうか。

一時はイーロン・マスク氏を抜いて世界一の大富豪に君臨したその資産額は、想像もつかない桁違いのスケールです。今日は、そんな波乱万丈で型破りな人生を、彼の「生い立ち」「仕事」「趣味」「恋愛」「日本との友情」という6つの切り口から紐解いてまいります。

逆境をバネにした反骨精神:複雑な生い立ち

エリソン氏のスタート地点は、決して順風満帆ではありませんでした。1944年、ニューヨークのブロンクスで19歳の未婚の母の元に生まれます。生後9ヶ月で重い肺炎を患い、育てきれないという判断から、シカゴに住む伯父夫婦に引き取られることになります。

特に、ロシア系ユダヤ移民で非常に厳格だったという養父ルイス氏とは、権威に疑問を持つ若きラリーとの間で衝突が絶えませんでした。養父から「お前はつまらない人間で一生を終える」といった厳しい言葉を投げかけられたこともあるそうです。

しかし興味深いのは、エリソン氏自身が後に、そのおかげで反骨精神が養われた、養父には感謝しているという趣旨の発言をしている点です。単なる反発で終わらせず、それを力に変える強さがこの頃からあったのでしょう。

名門大学に進学するも、名門イリノイ大学とシカゴ大学を2度中途退学。大学には馴染めませんでしたが、この間にプログラミングの才能には目覚めていました。20代前半、彼はわずかな荷物だけを持って、IT革命前夜の熱気に満ちたカリフォルニアへと向かいます。

オラクル帝国の誕生、そしてAIによる脅威の復活

カリフォルニアで彼はCIA向けのデータベース開発プロジェクトに関わります。このプロジェクトのコードネームこそが「オラクル(Oracle)」でした。IBMのリレーショナルデータベースに関する論文を見て、「これはイケる」と直感したその眼力が、後に世界を変えることになります。

1977年、エリソン氏が33歳の時、わずか1400ドルの自己資金で、SDL(ソフトウェアディベロップメントラボラトリーズ)を設立します。まだ製品も完成していない段階で、最初の顧客としてCIAとの契約を取り付けたという逸話は、彼の途方もない説得力とハッタリを物語っています。

さらにエリソン氏らしいのが、最初の製品リリースを「バージョン1.0」ではなく、いきなり「バージョン2.0」として発表したことです。あたかもすでに改良された版であるかのように見せかけ、初期の顧客の信頼を得るための大胆な演出でした。

順調に成長を続けたオラクルでしたが、1990年に最大の危機が訪れます。売上至上主義が行き過ぎ、営業担当者が無理な販売手法を横行させた結果、会計上の問題が噴出し、創業以来初の四半期赤字を計上。株価は80パーセントも暴落し、全従業員の10パーセントにあたる約400人のリストラを余儀なくされました。

この壮絶な失敗を猛省したエリソン氏は、自らの経営スタイルを改め、外部から経営のプロをCOOとして招き入れます。そして自身は製品開発のトップとしてデータベースの新バージョン「Oracle 7」の開発に集中。これが大成功を収め、見事なV字回復を果たしました。失敗から学び、自分を変える決断力こそが、この男の強さです。

その後、PEOPLESOFTやSUN MICROSYSTEMSなどの大型買収を通じて、データベース中心から総合IT企業へと舵を切ります。

そして今、時代は再びエリソン氏に微笑んでいます。AIブームの到来です。オラクルのクラウドインフラサービス「OCI(Oracle Cloud Infrastructure)」が、AI開発に必要なGPUを効率的に動かす高性能コンピューティング環境に最適化されているとして、驚異的な伸びを見せています。

その結果、OpenAIやソフトバンクループ、NVIDIAといったAI時代のキープレイヤーたちとの大型提携が次々と発表されました。特に、MicrosoftとOpenAIが進める総額5000億ドルとも言われる次世代AIインフラ計画「スターゲート」への関与は大きな話題となっています。

この動きが評価され、オラクルの株価は急騰。エリソン氏自身も、長年のライバルであるイーロン・マスク氏を抜き、一時的ですが世界長者番付のトップに立ちました。今年81歳にして現役のCTOとして技術の最前線に立ち続けるその情熱は、まったく衰えを知らないようです。

莫大な富が生んだ超絶な趣味と「日本」への愛

エリソン氏はビジネスの成功を、私生活にも存分に反映させています。

まず有名なのがヨットです。プロチームを率いて世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」に挑戦し続けており、2013年大会では崖っぷちから奇跡の8連勝で大逆転優勝を果たすという、彼の負けず嫌いな性格を象徴する出来事がありました。ご自身のスーパーヨットには、日本の剣豪にちなんだ「武蔵」と名付けたものもあります。

テニスも単なる趣味にはとどまりません。カリフォルニアで開催される大会「BNPパリバ・オープン」をなんと個人で買収し、施設を充実させて「第5のグランドスラム」と称される世界的なトーナメントに育て上げました。

そして、彼のスケール感を物語るのが「占有島」の存在です。2012年、ハワイ諸島のラナイ島の土地の98パーセントを、個人で3億ドルとも言われる額で購入しました。島では、自身のウェルネス哲学(心身ともに健康な状態を追求する考え方)を反映した超高級リゾート「Sensei(先生)ラナイ」を運営しています。

日本の美意識に魅せられて

エリソン氏は大の親日家としても有名です。若い頃から日本の企業とのビジネス経験を通じ、日本の文化、特にその組織力や美意識に深く感銘を受けたと言われています。

その愛は生活空間にも反映されています。カリフォルニアの豪邸は京都の桂離宮をモデルにした日本建築で、広大な日本庭園も備えています。

また、日本で最も有名なのが、京都・南禅寺近くに所有する別荘「何有荘(かゆうそう)」です。禅の思想にも通じる名前を持つこの歴史ある名園は、彼が2010年頃に80億円以上で購入したとされています。

派手さよりも本質を重んじる日本の美意識や構造へのこだわりは、彼が長年こだわり続けたITシステムの根幹をなす「データベース技術」への探求心と通じるものがあるのかもしれません。単なる趣味を超えた、彼の哲学的な価値観が垣間見えます。

スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスクらとの友情

これだけの影響力を持つ人物ですから、交友関係もまた特筆すべきものです。

まず欠かせないのが、Appleの共同創業者であるスティーブ・ジョブズ氏です。二人はシリコンバレーの近所に住む大親友で、お互いの才能を深くリスペクトし合っていました。ジョブズ氏がAppleを追放された後、エリソン氏が本気で「Appleごと買収しようか」と提案した話や、エリソン氏の結婚式でジョブズ氏が公式カメラマンを務めたという有名な逸話は、二人の特別な絆を物語っています。

そして現在のテック界の寵児、イーロン・マスク氏との関係も深いものです。マスク氏はエリソン氏を地球上で最も賢い人物の一人と賞賛し、メンターのように慕っていると言われています。エリソン氏もマスク氏の才能を高く評価し、テスラの取締役を務めたほか、Twitter(現X)買収の際にも多額の資金援助を申し出ています。二人はライバルというよりも、良き友人でありビジネス上の強力な協力者という側面が強いようです。

経済界だけでなく、政界にも強い影響力を持っています。彼は共和党の熱心な支持者として知られ、ドナルド・トランプ前大統領とも近い関係にあります。先述のAIインフラ計画「スターゲート」の発表もホワイトハウスでトランプ氏と共に行われるなど、その影響力の大きさから一部では「影の大統領」とまで評されることもあります。

「ラリー・エリソン」という「漢」とは?

ラリー・エリソンという人物は、逆境から這い上がった反骨心、常識を打ち破る行動力、そして80歳を超えてなお衰えを知らない情熱と野心の塊です。

テクノロジーに対する深い洞察力と、日本的な美意識にも通じる本質を追求する哲学が、オラクルという企業、そして現代のテクノロジーの世界を動かし続けています。AIインフラ需要という強力な追い風を受け、長年培ってきたデータベース分野での圧倒的な強みとマルチクラウド戦略を武器に、彼の挑戦とオラクルの成長は今後も続くことでしょう。

スターゲート計画のような国家規模、あるいはそれ以上の超大型プロジェクトが今後どのように具体化していくのか、ますます目が離せない存在です。ラリー・エリソンという存在自体が、もはや市場を動かす一つの要因になっていると言えます。


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