みなさま、こんにちは。今回、私たちが大注目するのは、現地時間の10月21日(火)に第3四半期決算を発表する「Netflix(ネットフリックス)」です。これまでは映画やドラマの動画配信サービスとして業界を牽引してきましたが、今やその戦略は大きく変わり、エンターテイメント業界全体を変革しようとしています。決算発表を前に、この巨大企業がどこへ向かおうとしているのか、投資家として何を抑えておくべきか、詳しく掘り下げてまいります。
1. 戦略の軸足は「会員数」から「エンゲージメントと収益化」へ
まず、最も重要な変化として、Netflixの経営戦略の重点が大きくシフトしている点があります。これまで決算の最大の注目点だった「四半期ごとの会員増加数」は、2025年をもって開示を取りやめる方針が発表されました。これは、これからの焦点が「量」から「質」へ移ったことを意味します。
新しい焦点は、「エンゲージメント(ユーザーがどれだけ頻繁に、長時間サービスを利用しているか)」と、それをいかに効率よく利益に結びつけるかという「マネタイゼーション(収益化)」の2点です。単なる会員数の増加という指標を超え、ユーザーとの「つながりの深さ」と、それを基盤とした「稼ぐ力」を重視する、成熟した成長ステージに入ったと言えます。
2. 好調な業績予想と、成長の鍵を握る広告プラン
市場のコンセンサス予想では、第3四半期の業績は非常に力強い伸びが期待されています。売上高は前年同期比で約17パーセント増の115.1億ドル(日本円にして1兆7000億円を超える規模)が見込まれています。さらに、利益の伸びはそれを上回り、1株当たり利益(EPS)は約29パーセント増の3.97ドルと、大幅な増益予想です。営業利益率も31.5パーセントへの上昇が見込まれており、高収益体質を維持できるかどうかが注目されます。
この健全な成長を牽引する鍵の一つが、低価格の「広告つきプラン」です。2025年時点では約9400万人ものユーザーがこのプランを利用すると推計されており、広告収入は前年比で倍以上に成長すると予想されています。ただし、広告プランが魅力的すぎると、これまで高い料金プランを使っていたユーザーの乗り換え(カニバリゼーション)が起きる可能性もあります。このバランスをどう取るか、そして自社開発を進める広告配信技術が、広告単価の向上と収益構造の安定化にどう貢献するかが、今回の決算で非常に注目される点となります。
3. ゲーム、音楽、ポッドキャスト。広がる「総合エンタメ・ハブ」戦略
Netflixはもはや映画やドラマを配信するだけの会社ではありません。積極的に多角化を進め、「総合エンターテイメント・ハブ」へと進化を遂げようとしています。
まず、ゲーム事業が本格化しています。モバイルゲームに加え、今年のホリデーシーズンからはスマートフォンをコントローラーにしてテレビで直接遊べるビデオゲームの提供を開始すると発表しました。モバイル市場の激しい競争を避け、テレビという未開拓の市場で、家族や友人と楽しめるパーティーゲームや、人気IPを活用した作品に注力する戦略です。
次に、音楽分野への進出です。大手音楽会社であるワーナー・ミュージック・グループと提携し、マドンナやプリンスといったレジェンド級アーティストの楽曲や物語を題材にした映像作品を共同制作する方向で進んでいます。ワーナーの膨大な音楽IPを活用し、新たなヒットコンテンツを生み出す狙いです。
さらに、ポッドキャスト分野ではSpotifyと提携し、人気のビデオポッドキャスト番組をNetflixプラットフォーム上でも配信する計画です。これは、動画形式のポッドキャスト視聴の需要の高まりに対応し、普段とは違うコンテンツを取り込むことで、ユーザーのエンゲージメントを高める狙いがあります。
強力な財務基盤が、この意欲的な多角化を支えています。営業キャッシュフローが大幅なプラスとなっており、その潤沢な資金をコンテンツ制作や新しい事業分野への投資に回すという、優良企業の理想的なお金の流れが確立されているのです。この万全の財務力が、未来への挑戦を可能にしています。
4. まとめ:投資家は「質の高い成長」を見る
今回の決算を見る際には、売上や利益といった数字だけでなく、エンゲージメントの指標(もし開示されれば)や、コンテンツ投資の費用対効果(ROI)など、より質的な側面を重視することが大切です。また、Disney+やAmazonプライム・ビデオといったライバルとの競争環境や、景気動向による広告収入への影響といった外部環境の変化にも目を配る必要があります。
決算発表直後は株価が大きく変動しやすい時期です。短期的な値動きに一喜一憂せず、ご自身の投資計画に基づいた冷静な判断とリスク管理を心がけていただきたいと思います。Netflixが今後、この巨大な顧客基盤と万全の財務力を武器に、エンターテイメントの未来をどのように形作っていくのか、その挑戦から目が離せません。
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