みなさん、こんにちは。今回は、市場の関心が非常に高い企業、テスラについて、現地時間10月22日に迫った第3四半期(7月~9月)決算の注目ポイントを整理していきます。期待と、一方でいくつかの懸念材料が交錯する現在の状況を見ていきましょう。
ジェットコースターのような株価と期待の背景
まず、テスラ株の動向ですが、このところまさにジェットコースターのような動きを見せています。今年4月の安値(約221ドル)からわずか半年で約2倍の430ドル近くまで急騰しました。特に9月単月で34%もの上昇は驚異的です。
この急騰の大きな要因の一つとして、イーロン・マスクCEOに対する巨額な報酬パッケージの公表が挙げられます。これは、マスク氏を会社に強くコミットさせ、将来の戦略に集中させるための強い動機付けになると、多くの投資家が前向きに評価したためです。マスクCEOへの強い期待感が株価を押し上げる一因となりました。
しかし、株価収益率(PER)が一時200倍を超えるなど、市場の期待が先行し、割高感を指摘する声も確実に増えています。多くのアナリストの目標株価平均も、現在の水準より低い位置にあります。テスラ株は、将来の成長を既にかなり織り込んでいる状態と言えるでしょう。
決算の焦点:過去最高の販売台数と利益率の行方
今回の決算で注目すべきは、やはり本業であるEV販売の状況です。先日発表された第3四半期の販売台数は49万799台と、市場予想の約44万台を大きく上回り、四半期ベースで過去最高を記録しました。
これは素直にポジティブなニュースですが、この好調な販売台数の背景を掘り下げる必要があります。9月末で終了することが決まっていたアメリカでのEV購入補助金(最大7,500ドル)の駆け込み需要が、販売台数を押し上げた側面が大きいと見られています。テスラ自身も値引きキャンペーンや有利な条件のローンを提供するなど、積極的に促進策を打ちました。
したがって、単純に販売が増えたと喜んでばかりはいられません。今回の決算で最も重要視されるのは、自動車事業の「粗利益率」(売上高に対する利益の割合)です。前の四半期(第2四半期)ではこの粗利益率が20%を割り込み、「売れてはいるが儲けは減っているのではないか」という懸念が市場に広がりました。
テスラが進めるコスト削減や、リチウムなど原材料価格の下落傾向を受け、利益率が改善しているのかどうかが最大の焦点です。市場予想では、第3四半期の総収入は前年同期比でわずかに増えるものの、調整後の1株当たり利益(EPS)は30%以上減少すると見込まれています。利益率の改善がなければ、販売台数が過去最高でも市場の評価は厳しくなる可能性があります。
株価の将来性を占う「未来戦略」の具体性
テスラ株が今の高い評価を維持、あるいはさらに上昇できるかを左右するのは、EV以外の新規事業の進捗です。
特に期待が大きいのは、「FSD(完全自動運転)ソフトウェア」の開発進捗と、無人の自動運転タクシーサービスである「ロボタクシー」事業について、より具体的なロードマップが示されるかどうかです。市場は夢のある話だけでなく、その実現に向けた具体的な計画やスケジュールを求めています。
マスクCEOはテスラを単なるEVメーカーではなく、AIを活用したロボット企業へと進化させたいという壮大なビジョンを語っています。開発中の人型ロボット「オプティマス」や、大型蓄電池システム「メガパック」を活用したエネルギー貯蔵事業などの進捗についても、このビジョンの実現を裏付ける具体的な進展が示されるかが鍵となります。抽象的な話に留まるようであれば、一部の投資家からは懐疑的な見方が強まるかもしれません。
投資家が抱える二つの大きな懸念
未来への期待が大きい一方で、テスラの足元にはいくつかの心配な懸念材料があります。
一つは、先述の補助金打ち切りの影響です。第3四半期の増加が駆け込み需要による一時的な押し上げだった場合、第4四半期以降、販売が大きく落ち込む反動が来ると考えるのが自然です。今後数四半期にわたって販売が低調に推移する可能性や、最悪の場合、売上高が再び減少に転じるという厳しい予想も出ています。
もう一つは、イーロン・マスクCEOへの巨額報酬パッケージへの懸念です。総額で約1兆円規模にもなると言われるこの報酬に対し、世界的な大手議決権行使助言会社であるISS(インスティチューショナル・シェアホルダー・サービセズ)などが、株主に反対票を投じるよう推奨しています。報酬額の天文学的な高さや、業績目標を部分的にしか達成できなくても高額な支払いが行われる仕組みなどが問題視されています。この報酬が承認されるかどうかの行方は、11月6日に予定されている株主総会の投票結果次第で、大きな注目を集めています。
さらに、BYDやシャオミなど、中国メーカーの急速な台頭もテスラにとって大きな脅威です。特にBYDは、2024年の年間売上高でテスラを上回る規模になっており、テスラの主力車種モデルYの直接的な競合となる戦略的な価格設定のEVを投入しています。シャオミもEV市場で好調なスタートを切り、競争は激化する一方です。
投資家としての決算との向き合い方
今週に迫った決算発表を前に、投資家として最も注視すべきは、発表される数字(売上高、EPS、自動車事業の利益率)が市場予想に対してどうだったかだけでなく、会社が示す「今後の見通し」(ガイダンス)です。
補助金終了後の需要予測、新しい廉価版モデルの販売状況、そして何よりもFSDやロボタクシー、AI戦略といった将来の成長を担う分野について、経営陣、特にマスクCEO自身がどれだけ具体的で期待を高める内容を語るかどうかが重要です。
現在の株価は将来への高い期待を既に織り込んでいるため、単に市場予想を上回る決算数字を出すだけでは不十分で、将来の成長ストーリーに対する強い確信を与えられなければ、失望売りを招く可能性も十分にあります。決算発表直後の短期的な株価の動きに一喜一憂するのではなく、テスラが目指す長期的なビジョンと事業戦略に変化がないか、中長期的な視点を持って見守っていく姿勢が大切になるでしょう。
