メタ・プラットフォームズ決算速報:売上増もAIへの巨額投資が嫌気され株価8%下落…リストラや組織改編から見えるこれからの戦略とは?

皆様、こんにちは。今回は、ビッグテックの中でも特に注目を集める「メタ・プラットフォームズ(旧Facebook)」が発表した最新の四半期決算について、投資家の視点から詳しく掘り下げてまいります。

結論から申し上げますと、今回の決算は非常に複雑な内容でした。主力事業は好調で売上は市場予想を上回ったものの、株価は時間外取引で一時的に6〜9%も下落するという結果になったのです。その背景や、これからの戦略をみていきましょう。

見かけの数字に惑わされないで:売上好調の裏側

まず、決算の具体的な数字を見ていきましょう。第3四半期の売上高は502億ドルとなり、市場予想の496億ドルをしっかりと上回りました。前年同期比ではプラス26.2%という力強い成長を維持しており、FacebookやInstagram、WhatsAppなどのアプリ群を含む「ファミリー・オブ・アプス(FoA)」部門が全体の売上を牽引しています。この部門の1日あたりのアクティブ利用者数(DAP)は35.4億人に達し、世界の人口の半数近くがメタのサービスを利用し続けているという、揺るぎないユーザー基盤の強さを示しました。

一方で、最終純利益は前年同期比で大幅減となりました。これは、7月に行われた税制改正の影響で、一時的に159億ドル(日本円で2兆円超)という巨額の税負担をこの四半期に計上したことが最大の理由です。この特殊要因を除いて計算すると、純利益は約186億ドルで、実際は前年比19%の増益だったと推計されます。つまり、広告という本業の稼ぐ力は健在であり、見かけの数字に惑わされてはいけないということが分かります。

市場が最も警戒した「AIへの巨額投資計画」

では、なぜ株価は下落したのでしょうか。その原因は、現在の決算内容ではなく、「今後の見通し(ガイダンス)」、特にAI(人工知能)分野への「歴史的な」規模の投資計画にあります。

メタは2025年の通期費用と設備投資(CapEx:データセンターやサーバーなどへの投資)の下限を大幅に引き上げました。これだけでも市場に警戒感が走りましたが、さらに衝撃を与えたのは、CFO(最高財務責任者)が「2026年以降の設備投資の増加額は2025年よりも著しく大きくなる。経費の増加率も大幅に加速する」と明言したことです。

この巨額の資金は、主に「超知能(スーパーインテリジェンス)」つまり人間を遥かに超える知能を持つAIの開発と運用に必要なインフラ整備に投じられます。テキサス州でのギガワット級データセンター建設や、最大5ギガワット規模の「ハイペリオン計画」など、その投資規模は想像を絶するものです。ザッカーバーグCEOは、将来計算能力が不足することこそが最大のリスクであるとし、意図的に先行投資(フロントローディング)を行っていると説明しています。これは、AI開発競争でトップを走り続けるための強い決意の表れと言えるでしょう。

AIへの「選択と集中」と組織再編

このAI戦略の本気度は、組織の動きからも見て取れます。AIモデルの学習に不可欠なデータラベリング大手のスケールAIへ巨額出資を行い、その創業者をメタの最高AI責任者(CAIO)として迎えるなど、AI開発の基盤となる重要ピースを確保しました。また、OpenAIやGoogleといった競合から、年俸100万ドル(約1.5億円)以上とも言われる破格の報酬でトップクラスのAI研究者を引き抜いています。

一方で、一部のAI関連部門で約600人規模の人員削減も報じられました。これは、やみくもな拡大ではなく、超知能や最先端の研究チームなど、より重要度の高い分野にリソースを集中投下するための「選択と集中」の動きと理解されます。

「メタバース」は諦めていない

AIへの傾倒が鮮明になる中で、社名変更のきっかけとなった「リアリティ・ラブス(RL)」部門、つまりメタバース事業はどうなったのでしょうか。RL部門は売上が前年比74%増と伸びたものの、依然として44.3億ドルの巨額な営業損失を計上しています。

一部で撤退の声もささやかれましたが、ザッカーバーグCEOはこれを明確に否定しています。メタバースは、2030年に700兆円を超える可能性を秘めた市場であり、すでにVRヘッドセット市場で優位性を築いていること、そしてAppleやGoogleといった既存プラットフォーマーへの依存から脱却するという長年の悲願を果たすための次世代プラットフォームであるからです。

さらに重要なのは、今最も注力しているAIとメタバースは非常に親和性が高いということです。AIは、よりリアルで没入感のあるメタバース体験を生み出す鍵となる技術になる可能性があります。AIへの巨額投資は、短期的な赤字を度外視し、メタバースという長期的な次世代プラットフォームの実現手段でもあると捉えることができるでしょう。

投資家が注意すべきリスク

長期的な成長ストーリーは非常に魅力的ですが、投資家としては短期・中期的なリスクも冷静に把握しておく必要があります。

最大のリスクは、先述の通り、AIへの巨額な投資負担です。特に2025年、そして2026年の収益を圧迫する可能性が高く、これだけの投資が期待通りの成果を生むのかという「実行リスク」も伴います。

また、AI開発競争では強力なライバルがひしめき合っており、巨額の資金が必ずしも勝利につながるとは限りません。さらに、EUがデジタルサービス法(DSA)違反の可能性があるとする初期調査結果を発表するなど、世界的な規制リスクも無視できません。もし違反が確定すれば、全世界の年間売上高の最大6%という巨額の制裁金が課される可能性があるのです。

まとめ

メタ・プラットフォームズは今、強固な広告事業という土台の上に、AIという強力な武器を手に入れ、次世代プラットフォームであるメタバースの構築を目指すという、非常に息の長い壮大な「賭け」に出ています。

投資を考える際には、この「長期的な夢」と、短期・中期的に横たわる「巨額の投資負担」「実行リスク」「規制リスク」といった不確実性を冷静に天秤にかけ、リスクをしっかりと理解した上で判断することが重要となります。


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