みなさんこんにちは。現地時間の10月29日(日本時間今朝早く)に発表された「マイクロソフト」の2025年7~9月期の決算は、売上高・純利益ともに市場予想を上回る非常に好調な内容となりました。特に、これで3四半期連続での過去最高益更新を達成しており、その絶好調ぶりが際立っています。
具体的な数字を見ると、売上高は約770億ドル(約11兆9000億円)で前年同期比18パーセント増、純利益も12パーセント増と、非常に力強い伸びを見せています。
この好調を牽引したのは、やはり同社の事業の柱であるクラウドサービス「Azure(アジュール)」です。世界的なAIブームを追い風に、Azure単体の売上高成長率は、為替変動の影響を除いた実質ベースで39~40パーセント増という驚異的な数字を記録しました。これは市場の平均予想を上回る結果です。
しかし、これほど素晴らしい決算内容であったにもかかわらず、発表後の時間外取引では株価が一時4パーセント以上も下落するという、不可解な動きを見せました。この高決算と株価下落という一見矛盾する現象の背景には、主に二つの要因が考えられます。
株価下落の二つの背景:コスト増と高い期待値
一つ目の要因は、「設備投資(CapEx)の急増」です。
今回発表された7~9月期の設備投資額は349億ドルに達し、前期から一気に100億ドル以上増加しました。市場予想も大きく上回るこの巨額な投資のうち、約半分がAIインフラ(高性能な半導体やデータセンター)の整備に向けられているとのことです。AIサービスの爆発的な需要に応えるため、先行投資をものすごいスピードで進めているわけです。
投資家の一部は、この急激なコスト増加に対し、「将来の成長期待は大きいが、足元のコスト負担が重すぎるのではないか」と懸念し、短期的な利益への影響を警戒する動きを見せました。未来への投資とはいえ、目先の費用増が株価を押し下げる要因となったのです。
もう一つの要因は、「市場の期待値が高すぎた」ことです。
Azureの成長率(39~40パーセント増)は市場予想を超えてはいますが、一部の特に強気な投資家や非常に高い期待を抱いていた層から見ると、「マイクロソフトならもっとすごい数字を出すはずだ」という期待にわずかに届かなかった可能性があります。予想を上回っても期待値を満たせない場合、「セル・ザ・ファクト(事実を売る)」と呼ばれるような、一時的な株価の調整につながったと見られています。
パートナー「OpenAI」とのより複雑な関係性
今回の決算と並んで注目されるのが、提携関係にあるOpenAIの組織再編と、それに伴うマイクロソフトとの関係の変化です。
OpenAIは、非営利組織傘下にあった営利事業部門を「OpenAIグループPBC(公益法人)」という新しい法人形態に転換し、再編を完了しました。これにより、将来的な新規株式公開(IPO)も視野に入れつつ、AI開発に必要な巨額の資金調達がしやすくなると考えられます。
この再編後のマイクロソフトの役割は、よりビジネスライクで複雑なものへと移行しました。
- 資本参加と技術アクセス
- マイクロソフトは、新法人の株式の27パーセントを保有する大株主となりました。
- OpenAIが開発する最先端のAIモデル、さらには将来的な汎用人工知能(AGI)のモデルへのアクセス権を、少なくとも2032年まで継続して確保しました。AI戦略における技術的な優位性を保持できた点は大きなメリットです。
- 独占権の喪失と新たな契約
- これまでの契約でOpenAIにとって独占的なクラウドプロバイダーであった地位を失い、OpenAIはAzure以外のクラウドサービス(オラクルなど)も柔軟に利用できるようになりました。
- しかし、その見返りとして、OpenAIは今後、総額で2500億ドル相当ものマイクロソフトのサービスを購入するという大規模な契約を結びました。これは、Azureの将来の収益にとって極めて大きなプラス材料となります。
全体として、両者の提携関係は継続・強化される側面がある一方で、以前のような一心同体の関係から、お互いの独立を保ちながら協力し合う、より複雑なものへと変化したと言えます。
今後の展望と投資家が注視すべきポイント
CEOのサティア・ナデラ氏は、決算会見で「目の前に広がる巨大なAIの機会に応えるため、今後も資本設備投資と人材の両面でAI分野への投資をさらに拡大していく」と強い姿勢を表明しました。
今後のマイクロソフトの将来性は、AI分野におけるリーダーとしての地位が揺るがないものと見られています。同社が開発するAIアシスタント機能「Copilot(コパイロット)」を、WordやExcelなどのOffice製品、Windows、Xboxといった幅広い自社製品やサービスに深く組み込むことで、さらなる収益拡大が期待されます。
しかし、投資家が今後も注意深く見ていくべきは、今回株価下落の一因となった「AIへの巨額投資の費用対効果」です。
市場が期待するような収益成長を、この大規模な先行投資がどれだけ早く、どれだけ大きく実現できるのかが、今後の株価の方向性を決める最大の鍵となります。
また、Azureの成長率が今後も現在の高い水準(40パーセント前後)を維持できるのかどうか、そして今回複雑化したOpenAIとの関係性の行方が、マイクロソフトにとってプラスに作用するのかどうかも継続的に追っていく必要があります。
株価が歴史的な高値圏にある現在、現在の株価水準が今後の成長見通しに対して妥当なのかどうか、冷静に評価する視点を持つことが個人投資家にとっても大切になるでしょう。AIへの大規模な「賭け」が、市場の高い期待に応える形で結実するのか、今後の展開から目が離せません。
