量子コンピューターの本命「IonQ(イオンキュー)」3Q決算が示す力強い成長と未来への戦略

みなさんこんにちは。未来のテクノロジーとして世界中から熱い視線が注がれている「量子コンピューター」。そのリーディングカンパニーである「IonQ(イオンキュー)」が、2025年第3四半期決算を発表しました。市場の予想を大きく上回る「絶好調」な数字を叩き出し、未来への道筋を明確に示した今回の決算内容をご紹介します。

決算前に飛び出した驚きのニュース:Amazonの全株売却

本題の決算内容に入る前に、市場に一時的な動揺をもたらしたニュースに触れておきましょう。決算発表の直前、巨大テック企業の「Amazon」が保有していたIonQの全株式を売却したという報道がありました。

売却の理由は明らかにされていません。初期からの投資家であり、テックの巨人でもあるAmazonが手を引いたという事実は、短期的な市場の心理(センチメント)にマイナスの影響を与える可能性は否定できません。投資家としては、私たちが知らない何か裏の情報があるのではないかと勘繰ってしまうのも無理はないでしょう。

しかし、この件を冷静に見極める必要があります。後述しますが、IonQは今回の決算発表時までに巨額の資金調達を完了し、盤石な財務基盤を築いています。特定の企業からの支援に依存しなくても、自力で研究開発や事業を推進していける体力があるのです。Amazonの売却は注目すべきニュースではありますが、現時点でIonQの長期的な成長ストーリーそのものを根本から疑う材料ではないと考えるべきでしょう。感情的にならず、会社の基本的な体力、つまりファンダメンタルズを見て判断することが重要になります。

期待を大きく上回る力強い決算内容

さて、本題の2025年第3四半期決算です。

一言で言えば、市場の予想を大きく超える、非常に力強い成長を示す内容となりました。

  • 売上高が市場予想を大幅に超過
    • 売上高は約3,987万ドルとなり、市場予想の約2,700万ドルをなんと50パーセント近くも上回る大躍進です。
    • さらに、前年同期比での売上成長率はプラス222パーセントと、3倍以上に伸びています。量子コンピューターへの需要が急速に高まっていることを示しています。
  • 損失額も予想より縮小
    • 調整後EPS(1株あたりの損失)はマイナス0.17ドルで、予想のマイナス0.20ドルよりも損失額が小さく抑えられました。
    • 調整後EBITDA損失(本業に近いキャッシュフローを示す指標)も約4,900万ドルの損失となり、予想の約5,800万ドルよりも損失幅が縮小しました。

売上の急拡大と同時に、コスト管理も意識されている様子が伺え、まさに絶好調という言葉がふさわしい内容です。

盤石な財務基盤と目覚ましい技術的進歩

驚異的な成長を支えるのが、潤沢な資金と技術力の進歩です。

  • 巨額の資金調達による盤石な財務基盤
    • 2025年9月末時点での現金及び現金同等物は約3億4,600万ドルでしたが、10月には株式発行により約20億ドルもの資金調達を完了しました。
    • これを含めたプロフォーマベース(仮の資産状況)の手元現金は、なんと約35億ドル(日本円で5,000億円超)に達します。これだけの資金があれば、当面の研究開発や事業拡大の資金は心配なさそうです。
  • 業界記録を達成した技術的成果
    • 量子コンピューターの基本演算を示す2量子ビットゲートの精度で99.99パーセントという業界記録を達成しました。これはコンピューターの信頼性に直結する重要な進歩です。
    • IonQ独自の計算能力指標であるAQ(アルゴリズミック量子ビット)では、目標としていたAQ 64を予定より3ヶ月も早く達成しました。AQ 64は、主要な競合方式のトップクラスと比較して、理論上36兆倍もの計算空間を持つとされ、現在のスーパーコンピューターでも解けないような特定の最適化問題や材料シミュレーションを可能にする扉を開く可能性があります。
  • 量子インターネット実現への一歩
    • 量子周波数変換(QFC)に成功し、量子コンピューターの情報を既存の光ファイバー通信の波長に変換することに成功しました。これは、量子コンピューター同士を安全につなぐ「量子インターネット」の実現に一歩近づく、未来を感じさせる進歩です。

量子センシングへの戦略的な事業拡大

IonQは、技術開発の加速と事業領域の拡大を目的に、積極的な企業買収も行っています。

  • 英国オクスフォードアイオニクス買収:独自技術の獲得とイギリスの研究開発拠点を確保し、IonQ自身の技術開発ロードマップを加速させる狙いがあります。
  • 米国ベクターアトミック買収:原子時計や高精度センサーといった超高精度な計測技術を持つ同社を買収することで、量子センシング分野へ事業を拡大します。宇宙開発や防衛分野での新しい応用を開拓しようとしており、量子コンピューティングだけでなく、量子技術全般のリーダーシップを確立しようとする強い意志が伺えます。

また、スイスのジュネーブでは欧州原子核研究機構(CERN)や高級時計メーカーのロレックスなどと協力し、都市としては初となる専用の量子ネットワークを立ち上げるプロジェクトを進めるなど、グローバルかつ力のあるパートナーシップを拡大しています。

今後の見通しと投資における留意点

  • 強気の通期予想引き上げ:2025年通期の売上高予想は、当初の8,200万ドルから1億ドルの範囲から、1億600万ドルから1億1,000万ドルの範囲へと大幅に引き上げられました。CEOは「2026年には株主へ成長と価値創造を提供できると確信している」と具体的な年を挙げ、業績への強い自信を見せています。
  • まだ続く大きな赤字:しかしながら、売上の急成長の裏側で、調整後EBITDA損失の通期予想レンジは2億600万ドルから2億1,600万ドルの間で維持されました。これは、売上は伸びているものの、市場をリードするための巨額の先行投資、つまり研究開発費や事業拡大コストが引き続きかかっていることを意味します。利益が出るまでにはまだ時間がかかることを覚悟しておく必要があります。
  • 個人投資家が留意すべき点:IonQのような成長株への投資には夢がありますが、同時に不確実性も伴います。
    1. 高成長と大赤字の共存:驚異的な売上成長ポテンシャルの裏には、利益を生み出すまでにはまだ相当な時間がかかるという現実があります。
    2. 黎明期の市場の不確実性:量子コンピューティングという市場自体がまだ非常に初期段階であり、技術的なブレークスルーや本格的な商業利用がいつ広がるのか、そのタイミングには不確実性が伴います。
    3. 高い期待値による変動リスク:市場はこの会社に非常に高い期待を寄せています。この高い期待に応え続けることができなければ、株価の変動も大きくなる可能性があります。
    4. 会計上の数字の癖:今回の決算では、GAAPベース(米国会計基準)での純損失が10億ドルを超える巨額なものでしたが、その大部分(約8.8億ドル)は、将来株式に転換される権利であるワラントの構成価値変動という、実際にお金が動いていない非現金の項目によるものです。実際のキャッシュフローを示す調整後EBITDAと合わせて冷静に見極める必要があります。

まとめ

IonQの最新決算は、技術力、資金力、そして戦略の全てにおいて、量子コンピューティング市場のリーダーとしての地位を強固にする内容でした。しかし、巨額な赤字と市場の不確実性、そして高い期待値による株価変動リスクも存在します。短期的なニュースに振り回されず、IonQの持つ技術やビジネスが本当に社会を変える力を持っているのか、ご自身の投資スタイルやリスク許容度と照らし合わせて慎重に検討することが大切です。


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