苦境に立つ「SNSの巨人」メタは大丈夫なのか?決算後の株価急落と2大懸念材料—「詐欺広告問題」と巨額AI投資の行方

ザッカーバーグCEOの「壮大な賭け」への懸念

世界的なSNSの巨人、「メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms、旧Facebook)」が今、大きな岐路に立たされています。直近の決算発表後、株価が大きく下落するなど、市場では同社の将来に対する懸念が強まっています。

背景にあるのは、主に二つの大きな問題です。一つは、同社の主要な収益源である広告事業に影を落とす「詐欺広告」問題、そしてもう一つは、将来の成長をかけたAI開発への「巨額すぎる投資計画」です。

本記事では、この苦境に立つメタの現状と、マーク・ザッカーバーグCEOが推し進めるAIとメタバースへの壮大な賭けが、今後どのような未来をもたらすのかを詳しく分析いたします。

1. 株価急落の裏側:見かけ上の利益激減と「終わりなき投資」

直近の決算内容を見ると、売上高自体は市場予想を上回り、前の年の同じ時期と比べて26%以上も伸びる約512億ドルを記録しており、主力の広告事業は依然として非常に好調であることが分かります。にもかかわらず株価がネガティブな反応を示した背景には、二つの大きな理由があります。

① 一時的な巨額の税金支払いによる「見かけ上の利益激減」

一つ目の理由は、会計上の特殊な要因です。一時的に約159億ドル(日本円で2兆円以上)という非常に大きな税金の支払いが発生しました。これによって、最終的な利益である純利益は、前年同期から83%も減少し、約27億ドルとなったのです。この「見かけ上の」大幅な減益が、市場に大きなインパクトを与えました。ただし、この特殊要因がなければ、純利益は約186億ドルとなり、実質的には前年同期比で19%の増加であったことが判明しています。本業の稼ぐ力自体は衰えていなかった、むしろ伸びていたという点は注目に値します。

② 市場を冷やした「巨額のAI投資計画」

二つ目の理由、そして市場が最も懸念した点が、AI(人工知能)への巨額の投資計画です。メタは2025年の年間総費用と設備投資の見通しについて加減を引き上げ、さらにCFO(最高財務責任者)が「2026年の設備投資は2025年よりも著しく増加する」とコメントしました。

AIを開発・運用するために必要なデータセンターや高性能サーバーといったインフラ、そして世界中からトップクラスのAI人材を集めるための人件費に、これまでになかったレベルの投資を続けるという決意の表れです。しかし、市場は「そんなに投資して、本当に見合うだけの収益が上がるのか」という不安から、株価を大きく押し下げました。

2. クラウド事業を持たない構造的弱み

AI開発への巨額投資で、なぜメタだけがここまでネストックが下がったのでしょうか。AmazonやAlphabet(Google)といった競合が比較的健闘したこととの大きな違いは、「クラウド事業」の有無です。

AmazonにはAWS、AlphabetにはGoogle Cloud、MicrosoftにはAzureという巨大なクラウドプラットフォームが存在します。これらの企業は、AI開発に不可欠な膨大な計算能力やインフラを自社で持ち、それを他の企業に提供することで収益化できます。つまり、AIへの投資が自社のクラウド事業の売上にも繋がりやすい、投資回収のしやすいビジネスモデルになっているのです。

一方、メタは自社で大規模なパブリッククラウド事業を持っていません。そのため、AIインフラへの投資は主にコストとなり、その投資を直接的に収益に結びつける明確な道筋が、他のクラウド大手と比べると見えにくいのです。実際、メタはGoogle Cloudと6年間で100億ドル規模とも言われる巨大な契約を結んでおり、AI開発のインフラの一部を外部に依存している状況です。この構造的な違いが、AI競争におけるメタの弱みとして市場から捉えられています。

3. 信頼を揺るがす「詐欺広告」問題の闇

AI開発への巨額投資の資金を捻出するプレッシャーは、同社のもう一つの大きな懸念材料である「詐欺広告」問題にも繋がっていると指摘されています。

報道によると、メタは2024年の年間総収益の約10%にあたる160億ドル(約2兆4500億円)を、詐欺や禁止されている商品の広告から得ると見積もっていた可能性があるとされています。

さらに深刻なのは、詐欺の疑いが濃厚な広告に対し、即時停止する代わりに「ペナルティビット」と呼ばれる仕組みを使い、通常より高い広告料金を課すことで、疑わしい広告からも収益を上げていたという指摘です。メタ側の意図としては、高額な料金を課すことで広告主を思いとどまらせる狙いがあったのかもしれませんが、結果的には収益を最大化したいという圧力が、安全対策よりも優先されてしまった可能性が指摘されています。ユーザーからの詐欺報告がシステムによって無視されたり、誤って却下されていたという内部文書の存在も報じられており、規制当局による調査も進むなど、同社の信頼性に大きな傷を残しています。

4. メタの強みと弱み:二兎を追う戦略の功罪

厳しい状況にありますが、メタには揺るぎない強みも存在します。

【強み】

  1. 圧倒的なユーザー基盤: Facebook、Instagram、WhatsAppなどを合わせると、世界中で毎日35億人を超える人々が利用しており、これは他の追随を許さない規模です。
  2. 高度なターゲティング能力: この巨大なユーザーデータ基盤を活用した、精度の高い広告配信能力は依然として同社の強力な武器です。
  3. 純粋な投資力と人材獲得力: 主力事業が生み出す莫大なキャッシュフローを背景に、AI分野ではライバル企業から年俸10億円を超える破格の報酬でトップクラスの人材を次々と引き抜き、一気に遅れを取り戻そうとしています。

【弱み・懸念材料】

  1. AI開発の遅れ: 巨額の投資にもかかわらず、自社開発のLLMの遅れや、一般向けAIアシスタント機能の不具合が指摘され、プロダクトとして競争力を発揮するにはまだ時間がかかると見られています。
  2. 広告依存のリスク: 収益の大部分を広告に依存しているため、景気変動や、Appleによるプライバシー強化のような外部環境の変化に業績が左右されやすい構造的な脆弱性を抱えています。
  3. メタバース事業の巨額赤字: 社名変更までして社運を賭けているメタバース事業(リアリティ・ラボ部門)は、直近の四半期だけでも約6,700億円もの営業損失を出しており、具体的な黒字化の道筋が一向に見えません。AIとメタバースという二つの壮大な「賭け」を同時に進めることは、財務的に非常に大きな負担となっています。

5. 投資家としてメタの現状をどう捉えるべきか

メタへの投資は、AIとメタバースという将来の成長の可能性に賭ける「ハイリスク・ハイリターン」な性質を帯びていると言えます。AIへの巨額投資が将来的に大きなリターンを生む可能性はありますが、その成果が具体的な収益として現れるまでにはかなりの時間を要し、少なくとも今後数年間は、投資コストが収益を圧迫し続けるリスクを認識しておく必要があります。

今後の主な注目点としては、

  • 主力の広告事業が詐欺広告問題や景気変動の影響を受けずに安定性を保てるかどうか。
  • AI開発が具体的に進捗し、競争力のあるサービスを生み出せるようになるか。
  • メタバース事業の赤字が縮小に向かうか、あるいは戦略転換があるのかどうか。
  • 詐欺広告問題に対する規制当局の動き。

これらの要素を注意深く見極めていく必要があります。個別企業の大きな変動リスクを取るのが不安な場合は、メタも構成銘柄の一つとして含まれているようなETF(上場投資信託)や、S&P 500のようなインデックスファンドを利用し、リスクを抑えつつ市場全体の成長を取りに行く分散投資の選択肢も有効です。

ザッカーバーグCEOの強いこだわりと巨額投資が、メタを再び力強い成長軌道に乗せるのか、それとも財務の重荷となって苦戦が続くのか、今まさにその大きな分岐点を見極める非常に重要な局面に立っていると言えるでしょう。


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