「マグニフィセント7」に次ぐ新常識。「MAG 10(マグ・テン)」が描くAI投資の未来地図

みなさん、こんにちは。米国株投資の世界では、日々新しいトレンドやキーワードが生まれては消えていきます。その中でも、ここ数年、市場を牽引してきたキーワードといえば間違いなく「マグニフィセント7(Magnificent 7)」でしょう。

AppleやMicrosoft、NVIDIAといった、私たちの生活にも馴染み深い巨大テクノロジー企業7社。これらは、2023年から始まったAIブームを背景に驚異的な成長を遂げ、S&P500などの主要指数を力強く押し上げてきました。米国株投資をしている方であれば、この7社の名前を聞かない日はないと言っても過言ではありません。

しかし今、ウォール街ではこの勢力図に大きな変化が起きようとしています。これまでの7社に、新たに注目の3社を加えた「MAG 10(マグ・テン)」という新しい枠組みが提唱され、投資家たちの熱い視線を集めているのです。

今回は、この「MAG 10」とは一体何なのか、なぜ今このタイミングで新しい概念が登場したのか、そして新たに追加された3社にはどのような魅力があるのかを、詳しく解説していきます。AI投資の第2幕とも言えるこの新しい動きを、一緒に紐解いていきましょう。

一時代を築いた「マグニフィセント7」の功績

本題に入る前に、まずは市場を席巻してきた「マグニフィセント7」について簡単におさらいしておきましょう。この7社とは、Apple、Microsoft、Alphabet(Google)、Amazon、NVIDIA、Tesla、そしてMetaの7社を指します。

彼らは圧倒的な技術力と資金力を武器に、世界の株式市場をリードしてきました。一時期はS&P500指数の時価総額のうち、実に約35%をこの7社だけで占めるという異常とも言えるほどの存在感を示していました。つまり、この7社の株価が上がれば市場全体が上がり、逆に彼らが不調なら市場全体も沈むという、まさに市場の運命を握る「主役」たちだったのです。

しかし、AI技術の進化と普及が進むにつれて、投資家の視点も少しずつ変化してきました。これまではAIのインフラを作る企業や、プラットフォームを持つ巨大企業に注目が集まっていましたが、AIの恩恵はより広い分野へと波及し始めています。そうした市場の変化を捉えるために生まれたのが、今回のテーマである「MAG 10」なのです。

新たな主役たち:MAG 10に加わった3つの巨人

「MAG 10」は、既存のマグニフィセント7に、Broadcom(ブロードコム)Palantir Technologies(パランティア・テクノロジーズ)、そしてAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)の3社を加えた計10社で構成されます。

なぜこの3社が選ばれたのでしょうか。そこには明確な理由と、AI市場のフェーズが変わりつつあるという重要なメッセージが隠されています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. Broadcom(ブロードコム):AIに最適化をもたらす影の立役者

まず1社目は、半導体とソフトウェアの巨人、ブロードコムです。これまであまり馴染みがなかった方もいるかもしれませんが、実はAIデータセンターには欠かせない存在となっています。

ブロードコムの最大の強みは、AI向けの「カスタム半導体(ASIC)」の分野で圧倒的な地位を築いている点です。NVIDIAのGPUが、誰でも高性能な計算ができる「既製品のスーパーカー」だとするならば、ブロードコムが提供するのは、特定の顧客のために設計された「オーダーメイドのレーシングカー」のようなものです。

GoogleやMeta、OpenAIといった巨大IT企業は、自社のAIサービスをより効率的に動かすために、汎用的なチップではなく、自社のシステムに特化した専用チップを求めています。その開発パートナーとして選ばれているのがブロードコムです。彼らの顧客リストには名だたるテック企業が並んでおり、NVIDIAの強力な対抗馬として、またネットワーク機器の強みを活かしたデータセンターの中核企業として、その重要性は増すばかりです。

2. Palantir Technologies(パランティア):AIを「応用」するデータ解析のプロ

2社目は、パランティア・テクノロジーズです。この会社は少し特殊な経歴を持っています。元々はCIAやFBIといった政府機関、あるいは軍事利用向けの高度なデータ解析プラットフォームを提供する企業として知られていました。そのため、少しミステリアスなイメージを持たれることも多い企業です。

しかし、彼らが選出された理由は、その高度な技術力を一般企業向けのAIプラットフォームとして展開し始めたことにあります。これまでAI投資の主役は、チップを作るNVIDIAのような「インフラ」企業でした。しかし、インフラが整えば、次に来るのはそれを「どう使うか」という「応用」のフェーズです。

パランティアは、企業が持つ膨大なデータをAIで解析し、意思決定に役立てるためのツールを提供しています。実際に多くの企業からの受注が急増しており、AI革命が「インフラ整備」の段階から、実際のビジネス現場での「活用・応用」の段階へとシフトしていることを象徴する存在と言えるでしょう。

3. AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ):市場が待ち望んだ競争相手

最後の3社目は、AMDです。長年、パソコン向けCPUやGPUの分野でIntelやNVIDIAと激しい競争を繰り広げてきた企業ですが、AI分野においてはNVIDIAに大きく水をあけられている印象がありました。

しかし、ここに来て風向きが変わりつつあります。AMDが投入した新しいAI向けGPUが高い評価を受け始めており、性能面でNVIDIAに肉薄しつつあるのです。

さらに重要なのは、市場の力学です。MicrosoftやMetaなどのチップを大量に購入する側からすれば、AIチップの供給をNVIDIA一社に依存するのは非常に大きなリスクです。価格交渉力の面でも、供給安定性の面でも、強力な「第2の選択肢」の登場を彼らは強く望んでいました。

そこに高性能な製品を引っ提げて現れたAMDは、まさに市場のニーズに合致した存在です。NVIDIA一強の独占市場に風穴を開け、健全な競争をもたらすプレイヤーとして、大きな期待が寄せられています。ブロードコムが「最適化」、パランティアが「応用」なら、AMDは「競争」を象徴する選出と言えるでしょう。

マグ10指数「Cboe Magnificent 10 Index」の仕組み

この10社で構成される新たな指数として、「Cboe Magnificent 10 Index(ティッカーシンボル:MGTN)」が既に組成されています。実はこの指数、構成銘柄の顔ぶれだけでなく、その算出方法にも非常にユニークな特徴があります。

それは「均等加重(イコールウェイト)」という仕組みを採用している点です。

通常、S&P500などの有名な株価指数は「時価総額加重平均」という方式をとっています。これは、時価総額が大きい会社ほど指数に与える影響が大きくなる仕組みです。そのため、AppleやMicrosoftの株価が大きく動けば、他の小さな銘柄がどうであれ、指数全体がその影響を強く受けてしまいます。

一方、MAG 10指数で採用された「均等加重」では、構成される10銘柄の比率がすべて平等に「10%ずつ」に設定されます。時価総額が3兆ドルを超えるMicrosoftも、それに比べれば規模の小さいパランティアも、この指数の中では全く同じ重みを持ちます。

これには大きなメリットがあります。特定の超巨大企業のパフォーマンスに指数全体が左右されにくくなり、10社の成長をよりバランスよく反映できるのです。例えば、テスラの調子が一時的に悪くても、他の9社が好調であれば指数全体としてはプラスを維持できる可能性があります。また、今後成長余地の大きい新規参入組(パランティアなど)の株価上昇の恩恵を、時価総額加重の場合よりも大きく享受できるという点も魅力です。

私たちはどう投資すべきか

非常に魅力的に映る「MAG 10」ですが、私たち日本の個人投資家はどのように向き合えばよいのでしょうか。

残念ながら、現時点ではこの指数に直接連動する日本の投資信託やETFはまだ登場していません。米国のシカゴ・オプション取引所では、2025年の第4四半期から先物やオプション取引が開始される予定とのことですので、今後注目度が高まれば、日本の証券会社からも関連商品が出てくる可能性は十分にあります。

現状でこのテーマに投資をするなら、自分でこの10社の株を個別に購入するか、あるいは自分の投資スタイルに合わせて取捨選択することになります。

ここで重要なのは、「指数(パッケージ)への投資」と「個別株投資」の違いを理解することです。

もし商品化されたとして、MAG 10のような指数にまとめて投資するメリットは、手軽に分散投資ができることです。どの企業が次の覇権を握るかわからない混迷期において、10社全体に網をかけておくことで、大失敗のリスクを減らすことができます。「どれが勝つかわからないから、有力選手全員に賭けておく」という戦略です。

一方でデメリットもあります。それは「爆発的なリターンは狙いにくい」という点です。もし10社のうちの1社が株価10倍になったとしても、他の銘柄が足を引っ張れば、全体のリターンはマイルドなものになります。また、業績が低迷している企業も機械的に保有し続けることになります。

対して、自分で銘柄を選んで投資する場合は、「今はテスラは様子見をしよう」「パランティアの成長性に賭けてみよう」といった具合に、自分の相場観を反映させることができます。当たれば大きなリターンが得られますが、外した時のダメージも大きくなります。

結局のところ、自分がどれくらいのリスクを取れるのか、そしてどれくらいの手間をかけられるのかによって、最適な方法は変わってきます。

おわりに:AI投資は「点」から「面」へ

マグニフィセント7からMAG 10へ。この流れは、AIというテーマが一部の巨大企業だけの特権ではなくなり、より広い産業、より多様なプレイヤーへと広がっていく過程を映し出しています。

インフラを作る企業、それを応用する企業、そして市場に競争をもたらす企業。それぞれの役割を持ったプレイヤーたちが、互いに刺激し合いながら市場全体を押し上げていく。そんなダイナミックな展開が、これからの米国株市場では見られるはずです。

今はまだ「MAG 10」という言葉に馴染みがないかもしれませんが、数年後にはこれがスタンダードになっているかもしれません。投資の世界では、常に一歩先を見据えることが重要です。既存の7社だけでなく、新しく加わった3社の動き、そしてそれらが織りなす新しい市場の景色に、今後も注目していきましょう。


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